Hérold: P-Con#2,3,4@Hervé Niquet/Sinfonia Varsovia, Neuburger |
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Louis-Ferdinand Hérold: Piano Concertos Nos. 2, 3 & 4
Louis-Ferdinand Hérold:
Piano Concerto No. 2
Piano Concerto No. 3
Piano Concerto No. 4
Jean-Frédéric Neuburger (piano)
Sinfonia Varsovia
Hervé Niquet(Cond.)
エロール:
・ピアノ協奏曲第2番変ホ長調
・ピアノ協奏曲第3番イ長調
・ピアノ協奏曲第4番ホ短調
ジャン=フレデリック・ヌーブルジェ(ピアノ)
シンフォニア・ヴァルソヴィア
エルヴェ・ニケ(指揮)
エロールはモーツァルトよりも後、だいたいベートーヴェンと同じような時期を生きた19世紀フランスの作曲家。親は元々はアルザスの出身。
ルイ=フェルディナン・エロールは、バレエ=La fille mal gardée(ラ・フィユ・マル・ガルデ:邦題は「リーズの結婚」)、およびオペラZampaの作者として有名で、そしてPコンも4つ書いているそうだ。このCDはそのうちの三つをフィーチャーしている。エロールは、1810年、彼が自身で作曲した作品を自演してあるコンクールで一位を得る。その賞に関して、自作自演で首位を得るのは史上初だったそうだ。審査員のうちの1人は次のように述べた:「この作品には欠点がいっぱいある。しかし私は彼が近い将来、大物になることをこの作品を通じて予見したのだ。」
1812年、彼はローマ大賞を得る。また1813年の春にはローマにて彼の最初の交響曲が作曲された(ローマ大賞を取ったものは皆、研鑽を積んで進化していることを示すことが義務づけられていたとのこと)。
1815年、エロールは健康上の理由でローマからナポリへ転居した。そこで、彼が2番目の交響曲および3つの弦楽四重奏曲を含む幾つかの作品を書いた。その後、様々な背景から彼の成果は主としてオペラおよびバレエに集中するのであった。
ピアノを弾いているヌーブルジェはご存知の通り、今やフランスを代表する若手ピアニストであり、またシンフォニア・ヴァルソヴィアはMusicArenaが随分と前から着目してきた鋭敏な小規模室内楽団だ。因みに、ポーランドを出自として欧州進出したシンフォニア・ヴァルソヴィアの最初の客演指揮者はユーディ・メニューインだった。その後、ペンデレツキやマルク・ミンコフスキーが音楽監督として歴任することとなる。
エロールのこれらの作品は新しさがないというか、何とも平坦で平和な進行を見せる。誤解を承知で喩えるなら、モーツァルトの天国的な響きとハイドンの屈託のないストレートな旋律を足して二で割ったようなところがあるのだ。但し、モーツァルトのような「なよ」とした部分は皆無であり、また、ハイドンのような欠伸が出るような遊びは一切無い。さりとて同時代のベートーベンが構築した緊迫感に満ちた厳しい音世界とも無縁であり一種独特の純音の世界を作り出しているのである。
シンフォニア・ヴァルソヴィアが紡ぐ高密度の弦楽を縦糸とし、鋭い切れ味のヌーブルジェのピアノが横糸となって織りなされる絢爛で美しく屈託のないこの音の世界は独特であって、確かにモーツァルトには似ているけれど、ちょっと高貴でセンシティブなエロールの描く世界は、私自身があまり経験してこなかった分野かも知れない。ちょっと前から帰宅後の遅い時刻に繰り返し聴いているけれど、なんとも耳に残るCDなのだ。
(録音評)
MIRARE MIR127、通常CD。録音は2010年5月16-18日、場所はMaison de la Radio Polonaiseとある。音質はMIRAREとしてはたまに出現する暖色系、かつアンビエント豊かなもので、一聴するとアンサンブルは残響過多ともとれるもの。しかし、解像度や音場の構築に関してはMIRAREの水準を大きくクリアする出来映えであり、恐らくは華やいだエロールの曲風とシンフォニア・ヴァルソヴィアの濃密な演奏を意識してこのような音色にしていると思われる。そうした中、ヌーブルジェのピアノはアンビエント豊かではあるが精緻で細身な捉え方であって、これがステージの真ん中に小さめにどんぴしゃ定位して気持ちがよい。しかし・・、このレーベルの音作りには毎度のことながら感心させられる。作家の作風と演奏者の曲想、そしてオーディエンスが感じるであろう雰囲気とそこから得られるであろう心理的な結果をきちんと予測した上での確信犯的な調音は素晴らしい。ここまでやって初めて、音楽CDは芸術作品を収めるに相応しい媒体製品になり得る、というMIRAREの徹底した姿勢には敬服する。
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