Brahms: Liebesliederwalzer & Hungarian Dances@B.Engerer+B.Berezovsky |
http://www.hmv.co.jp/product/detail/4036102
Brahms: Liebesliederwalzer & 10 Hungarian Dances
Brahms:
Liebeslieder-Walzer Op.52
Hungarian Dance WoO.1 1、2、4、5、6、8、11、16、17、21
Brigitte Engerer & Boris Berezovsky (Pf)
ブラームス:
・ワルツ集『愛の歌』 Op.52a(4手のための)
・ハンガリー舞曲集より第1、2、4、5、6、8、11、16、17、21番(4手のための)
ブリジット・エンゲラー(ピアノ)
ボリス・ベレゾフスキー(ピアノ)
ブラームスが4手連弾と明に指定して書いて、かつ完結させた自身の純粋作品としては僅かにこの二つだけが残されている。このCDの後半に入っている凄く有名なハンガリー舞曲は、実は、ブラームスとしての作品番号(Op.XX)は付けず、Werke ohne Opuszahl(英語:Without Opus number)WoO.XXと表記される。ロマ族の民族音楽(民謡)やチャルダッシュ音楽から主題を採取したことから真のオリジナルとはみなしていなかったのであろう。例えば、ハンガリー舞曲の代表曲であるWoO.1-#5は、全く違う旋律を用いたモンティのチャルダッシュと同じ形式をとる熱情的な作品であるが、これは、チャルダッシュ=曲名ではなく、チャルダッシュという楽曲形式を言うのであって、例えば三部形式だのソナタ形式だのと似た分類と理解すれば大きな誤りはないだろう(モンティのチャルダッシュは浅田真央がフィギュアのフリーに使って有名になったタイトルでお馴染み)。
そういった点において、ハンガリー舞曲はブラームスのネーティブな作風として後世に伝えている曲集としてそのまま扱うにはもちろん難がある。だが、ブラームスは音楽リスナーとしても耳がとても長けており、様々な名曲のトランスクリプションを書いたり、時には著名協奏曲のカデンツァを書いたりと、その創作領域も適応範囲も意外に広いのである。
愛の歌は、その名の如く愛らしく、そして切なくて美しいワルツ集であって、これがブラームスが書いた唯一の連弾専用クラヴィーア曲である。一つ一つは短くまとまった短編集といった風情の曲集なのだが、これが連綿性、テーマ性をもった並べ方であってとても秀逸。形式の自己融和を目指したブラームスらしい渋い作品集だ。
前置きが長くなったが、とにもかくにもこの二人のライヴ演奏は凄くよい。もう、コメントのしようがないくらい完成されているけれど、そんなことはどうでも良くて、これはとにかくこの二人の絶妙なコンビネーションと超絶的な4手連弾を楽しむためのディスクなのだ。連弾は弾いても聴いても楽しいものなのであった。
(MIRAREにはこのカップル以外に、もうワンペア、連弾のエキスパートが在籍する。それはクレール・デゼールとエマニュエル・シュトロッセで、彼らもまた凄い演奏を聴かせてくれる)
(録音評)
MIRARE、MIR134、通常CD。録音は2011年、ラ・フォル・ジュルネ・ドゥ・ナントでのライヴ。ライヴであるというハンディは殆ど感じられない高品質録音である。多少引け気味のマイクアングルは会場のノイズと奏者の息遣いをも切り取って来るという役割のようで、臨場感はやはりセッション録音とは段違いだ。その中にあって二台のベヒシュタインが醸す重厚なボディ・マスが確実に捉えられており、ライヴ収録のお手本のような録音と言える。小音量で俯瞰的に聴くも良し、ちょっとボリュームを上げてライヴかぶりつき席の熱い雰囲気を楽しむのも良し、万能の音場調整が施されたこのライヴ盤は、ピアノ・ファンのみならず広くお勧め出来るもの。
1日1回、ここをポチっとクリック ! お願いします。