Schumann: Davidsbündlertänze Etc@Angela Hewitt |
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Schumann:
Kinderszenen, Op.15
Davidsbündlertänze, Op.6
Piano Sonata No.2 in G minor, Op.22
Angela Hewitt (piano)
シューマン:
・子供の情景Op.15
・ダヴィット同盟舞曲集Op.6
・ピアノ・ソナタ第2番ト短調Op.22
アンジェラ・ヒューイット(ピアノ)
この人のアゴーギクは独特の激しさと荒々しさに満ち溢れていて、シューマンのような中性的でちょっとナヨとした作風の曲を弾くには方向性がちょいと違うな、と思いながら何度か通しで聴いてみた。
大人になった人間が、或いは老齢の域に達し、まさに命の灯火が消えようかという淵に近づいた人が、過去、自分が子供だった頃を脳裏に浮かべて思い出し、その時代を生きた自分の心象と情景を思い出す、という風情あるシューマン作品中最大傑作のうちの一つ。そう、子供の情景は、他の子供向け作品ではなくて、こういった大人向けのセンチメンタルな作品なのである。
ヒューイットの芸風はこの子供の情景を弾くにはちょっと解釈が太く、少々荒れていてどうなんだろうと思わされる。トロイメライだけは前後との連続性を無視して可憐にそして優美、幻想的に弾ききっているが、但し音量とタッチが弱すぎて残念な感じ。全体的にはかなり五月蠅く現実的な子供の情景に仕上がっていて、もうちょっと夢見心地の部分が強調されても良いかな、というところ。
一方のダヴィッド同盟は元々の規模感と起伏の大きさがヒューイットのダイナミックで気性の激しい芸風にマッチしているのか、もの凄く明晰な色彩感、ならびにアクロバティックな快感を存分に味わうことができる良い演奏だ。どの曲もそれぞれにドラマがあり楽しいが、取り分け第14曲:Zart und singend、第15曲:Frischあたりの飛翔感とドライブ感が白眉。
ソナタ2番は4楽章形式をとる珍しい形式だが規模的には中くらいの長さの作品。これもシューマンらしい劇的な部分と、反面アンニュイな叙述的スケールが折り混ざった名曲なのである。もうちょっと蔭の物憂さを表現して欲しいがヒューイットの爆裂する強打と荒れ気味の高速パッセージがそれを邪魔している風だ。ヒューイットの運指は確かに巧妙でとても速い。しかし、一連のスケールにおいては末尾の処理に難点があって少々混濁したまま次の小節へと移ってしまうので何となく音の純度が低くなるのだ。
最後になったが、このアルバムはヒューイットお気に入りのファツィオリで弾かれている。言われてみると確かにファツィオリの音である。しかし、その前振りを知らずに聴いたとすればそれが分かる人は殆どいないのではないだろうか。というのはファツィオリの美点である歪感の低さは弱音部ではしっかりと感じられるものの、ヒューイットの激しく、また荒れたタッチが混ざることでスタインウェイなど従来からの現代ピアノの音と余り区別が付かないのである。寧ろファツィオリだからこそこの程度の荒れと歪感で収まっているとも言えようか。これがスタインウェイだったらピーキーでノイジー極まりない音楽になるような気がする。ヒューイット自身その癖をよく自覚しているからこそファツィオリを選択している気がする。割れ鍋に綴じ蓋的な考えではあるが。
(録音評)
Hyperion CDA67780、通常CD(CD-TEXT入り)。録音は2009年11月6-9日、場所はクルトウアツェントルム・グランドホテル(ドビアコ/イタリア)とある。CD-DAとしてはとても優秀な録音で、密度感もスケール感も素晴らしい。音像の明晰さ、肥大化しないコンパクトなピアノは中庸位置からの俯瞰となりちょうど良い具合だ。ファツィオリが持つ孤高の魅力=限りなく純度の高い中高域が見事に捉えられている。ヒューイットの臨場感溢れる上部雑音まで克明に録られていて実に写実的、いや3D的なピアノ録音だ。ファツィオリの録音としては珍しく歪感もノイズも多く、ちょっと異色のCDかも知れない。
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よく聞き込まれていますね。
私はシューマンは苦手です。
なぜか、病的なものを感じて、
自分のうちにある何かが拒絶してしまうのです。
おかしいでしょう。
ふふふ
でも、音楽は良いですね。
今日もスマイル