Debussy: Beau Soir Etc@Janine Jansen |
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Janine Jansen: Beau Soir
Debussy: Violin Sonata
Debussy: Beau Soir
Debussy: Clair de Lune
Dubugnon: La Minute Exquise
Boulanger, L: Nocturne rranged by A. Roelens
Dubugnon: Hypnos
Messiaen: Theme and Variations for Violin and Piano
Fauré: Après un rêve, Op.7 No.1 arr. violin & piano
Ravel: Violin Sonata in G major
Dubugnon: Retour à Montfort-Lamaury
Janine Jansen (violin) & Itmar Golan (piano)
・ドビュッシー:ヴァイオリン・ソナタ ト短調
・ドビュッシー:美しい夕暮れ
・ドビュッシー:月の光
・デュビュニョン:ラ・ミニュート・エクスキーズ
・リリ・ブーランジェ:夜想曲
・デュビュニョン:眠り
・メシアン:主題と変奏
・フォーレ:夢のあとに
・ラヴェル:ヴァイオリン・ソナタ ト調
・デュビュニョン:モンフォール・ラモリに帰って
ジャニーヌ・ヤンセン(ヴァイオリン)
イタマール・ゴラン(ピアノ)
メンコン、チャイコン、ベトコン、ブリテンというメインストリームを矢継ぎ早にリリースして好評を博し、そして間にバッハやヴィヴァルディなども挟みつつ、着実にヴィルトゥオーゾの王道を歩んできたかと思われたジャニーヌである。が、ここへ来てジャニーヌの新境地を垣間見せているアルバムが登場した。
ジャニーヌが弾く楽器は一貫してストラヴィヴァリ「Barrere」であるが、その優雅で美しい響きが、このアルバムにおいてはちょっとくすんで翳りを帯びているように聞こえる。Barrere持ち前の繊細さでディテールを刻み込む鋭さは変わらないのであるがブリリアンスが極端に抑えられて渋い響きなのである。これは、扱っている曲たちの曲想がそう聞かせるのか、或いはこの種のフランス楽派作品が醸し出すある種の黄昏時を表現するための演出なのかは分からないが、本当に曲風とVnの音色がマッチしているのだ。
冒頭、ドビュッシーのソナタにおいては恐ろしく研ぎ澄まされた独特の感性が発露している。つまり今までのコンチェルト群では決して聴く事の出来なかったジャニーヌの精緻かつ内向的な側面を露わにしていると言える。
アルバムタイトル=Beau Soir(美しい夕暮れ)と月の光は箸休めとしても、次のデュビュニョンのオリジナル作品の諧謔味と色彩および明暗対比の描き方もジャニーヌとしては新境地かも知れない。ファウストらが好んで取り上げているジョリベにも通ずる浮遊感と不安定・不安感を募らせる独特の空間表現が素晴らしい。ブーランジェの夜想曲も変わった構成の曲だが、これまた不安定感と浮遊感が前の曲と符合する夢心地を描くもので、楽器の音色、および光沢を抑えた渋めの弦とマッチしている。勿論、ジャニーヌの繊細極まりない操弦技巧には文句の付けようがない。
デモーニッシュなメシアン、そしてフォーレの傑作小品 Après un rêve(夢のあとに)を挟んで、このアルバムの白眉であるラヴェルのVnソナタが入っている。ラヴェルはこのVnソナタを完成させた暫くあと、左手のPコン、両手のPコンと立て続けにピアノ協奏曲を書き上げるのであるが、Vnソナタの3楽章の前半は左手のPコン中間部、3楽章の後半は両手のPコン1楽章の展開部~コーダ部と似ている。というかジャズっぽい旋律も、そして和声展開も殆ど同じパターンなのである。ジャニーヌの細密な解釈とダイナミックでパワー溢れる立ち回りが凄い。VnとPfだけで、あの両Pコンのハイライトを凝縮して演奏しているようなものであるが、この二人はオケ+ソロPfにも勝るとも劣らない劇的でスケール感豊かな演奏を繰り広げている。イタマール・ゴランのふくよかで包容力の強いPfサポートも非常に秀逸であることを付記しておく。
(参考)このアルバムのプロモーション・ビデオがアップされていた。
(録音評)
DECCAレーベル、4782256、通常CD。録音は2010年5月、場所はお馴染み、ベルリンのTeldex Studioである。今回はPolyhymnia録音ではなく、純正DECCA録音だ。音質だが、必要最低限のアンビエンスだけを残し、あとはバッサリと音響的暗闇の中で録っている風情で、S/Nが非常に高くてなかなかに優秀な録音だ。ピアノの音像は少々大きめだが、そのぶんジャニーヌのBarrereがききりとくっきり細めに浮かび上がり、精緻に、しかし渋めな音色を奏でる。
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