コトブキ@伊勢佐木町 |
末吉橋の横浜日劇(映画館)のそばにあった老舗だが、日劇が閉鎖されると同時にイセザキモールへ移転して来た店。自称は「街のレストラン」だが、昭和の香りと往年のハマの文化を今に伝える貴重な洋食屋だ。
この店は前を通りかかりながらもなんとも頽廃的かつ客層の雰囲気からして敷居が高くて入れていなかった。この日、家内はオムライスが食べたいという。では、今風のトロフワ系ではないこちらの昭和洋食伝統とされるオムライスを試してみようと言うことで意を決して入った。
店内に一歩踏み入れるとそこはまさに高度経済成長の頃には街のあちこちで見られた「あの」雰囲気だ。お世辞にも小綺麗とは言えないこのファミリアな風情からは得も言われぬノスタルジーが放散されている。入店時の客だが、馴染みの高齢紳士、遅い昼食をとりに来たと思しき営業マン風の若い男性、大陸出身と思われるご婦人二人連れ、そして近くの店舗改修等を請け負っていると思われる鳶風情の三人組だ。それぞれめいめいに美味しそうな洋食を召し上がっている。
家内は予定通りオムライス、私は迷った挙げ句にハンバーグカレーを頼んだ。待つこと割と長時間、サーブされてきたオムライスは予測を裏切らない昭和中期を彷彿とさせるオーソドックスな出で立ちだ。薄焼き卵にキッチリと隙間無く包まれたケチャップライス、そして化粧のケチャップの彩りは鮮やかだ。私のハンバーグカレーは丸い中型皿にご飯が全く見えない様にたっぷりとルーが注がれたもので、表面の断続的な突起からそこには拍子木切りにされたカツかハンバーグが存在しているであろうことだけが察知できるという潔い盛り付けだ。
オムライスの卵は、勿論フワトロではなくしっかりと加熱凝固した薄焼きだ。しかし卵の香りはしっかりと保持しており、中のケチャップライスとの相性も抜群。ケチャップライスの酸味は控えめであり、もっと酸っぱい味が好みという場合には化粧ケチャップを適宜スプーンで加えて食するがよい。ライスにはじっくりと炒めたタマネギと滋味深い鶏肉が潜んでおり、これは非常にバランス良く、しかも優しい味である。ホッと一息入れたくなる懐かしさだ。
ハンバーグカレーは、カレーと言うよりは、今や死語とも言える「ライスカレー」の風情だ。
スパイシーでもなくコク深くもなく、単にストレートな塩分を溶かし込んだオリエンタルメタルカレーの業務用に角切り豚肉を多めに投入して煮込んだというルーだ。ハンバーグは注文を受けてから焼いたのであろうが多少広めの焦げが目立つ。
中味はみっしり稠密に詰まった合い挽き肉で、繋ぎなどを殆ど含まないためか固くて重量感がある。この食感は昭和中期に一世を風靡したマルシン・ハンバーグのそれと酷似している。ルー自体はポークカレーとして仕込んだものなのでハンバーグ以外にもトロトロの豚肉がゴロゴロと出てきて、これはこれで楽しい演出だ。
楽しく美味しいハマ散歩&ランチだった。
実は、この界隈には昭和から取り残されて存続している洋食屋がいっぱいあるのである。今後はそういった店を丁寧に回ってみたいと思っている。
(シリーズとして何回続くかは自信はないが、息長く取り上げてみたい)
コトブキ
横浜市中区伊勢佐木町5-129-9
電話: 045-251-6316
営業: 10:00~26:00(日曜は25:00)
定休: 年中無休
最寄: JR関内12分、京急・黄金町7分、
市営BL・伊勢佐木長者町4分、
阪東橋7分
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