Mozrt: Complete Vn-Cons@Kremer, Kremerata Baltica |
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モーツァルト:ヴァイオリン協奏曲全集
CD1
・ヴァイオリン協奏曲第1番変ロ長調K.207
・ヴァイオリン協奏曲第2番ニ長調K.211
・ヴァイオリン協奏曲第3番ト長調K.216
CD2
・ヴァイオリン協奏曲第4番ニ長調K.218
・ヴァイオリン協奏曲第5番イ長調K.219『トルコ風』
ギドン・クレーメル(ヴァイオリン)
クレメラータ・バルティカ 録音時期:2006年8月11日
録音場所:ザルツブルク、「モーツァルトのための劇場」
録音方式:デジタル(ライヴ)
モーツァルトのVnコンと言えば余りにベタで、しかも全曲が長調で書かれた明るく屈託のない曲想、悪く言えば平坦で平和で面白味に欠けるちょっと退屈な作品たち。そういうこともあって取り上げるか否かちょっと躊躇った。が、これはあの著名にして独特のプレゼンスと異彩を放散するクレーメルのモーツァルトと言うことで一聴の価値があると信じて買ってみたもの。
クレーメルと言えばプロコ、ストラヴィンスキー、ショスタコなどの旧ソ連系、アルバン・ベルク、シェーンベルク、またそれ以外にもバルトーク以後の現代物への傾倒が昨今の演奏での基調となっているのであるが、今回のこれは伝統的古典派/最初期ロマン派の代表作をこれまた超オーソドックスなスタイルで引き上げたものとなっており、どういう風の吹き回しなのであろうか。
演奏は、ひとことで言うとクレーメルだけが可能なモーツァルトであり独特の冷涼感と超微粒子のディテール掘り下げは他に例を見ない独自世界だ。これらのVnコンが本来持っている天国的で分かり易く華やいだテクスチャは身を潜め分析的でクールなクレーメルの世界が展開される。白眉は5番トルコ風の緩徐楽章で、特に最弱部での微細な描き込みは青白い炎(ほむら)とでも言うように霊妙、ゆらゆらと燐光を放つ微妙な歌わせ方だ。肉声でボソボソと呟いているような弦の振るわせかたはクレーメルらしいと言えばらしい。が、やはり普通のモーツァルトらしくはない。肉感的なムターのモーツァルトはムーツァルトだが、このクレーメルの冷たいモーツァルトはクレーメツァルトとでも言いたくなるような特異なポジションを築いていると言えようか。
バックはクレーメルの子飼いのクレメラータで、少人数のこの時代のバック・オケを再現するには最適規模の楽団。そして限りなく透明で混濁のないストレートかつ透徹されたサポートだ。つまり極めて巧い。
(録音評)
NONESUCHレーベル、7559.798863、通常CD二枚組。ライナー。クレジットは次の通り:
Mozart: The Complete Violin Concertos
Gidon Kremer, solo violin and artistic director
Kremerata Baltica
Recorded live in concert at the Salzburg Festival, Haus fur Mozart,
Salzburg, August 11, 2006
Recording Producer: Helmut Muhle
Balance Engineer and Tape Editor: Johannes Muller
Assistant Engineer: Lutz Wildner
Mastering Engineer: Christoph Stickel, msm-studios GmbH, Munich
録音は結構古くて2006年、ザルツブルク音楽祭の前夜祭から、ザルツブルク祝祭小劇場で開かれたマラソン演奏会のライブとのことだが、とても生とは思われない高い完成度とノイズ背景の静かさだ。音質はフェザータッチの軽量感が全体を支配する小気味の良い調音で、ノルウェーの2Lレーベルを思い出す感触だ。ディテールもレンジ感も高いレベルを達成している優秀録音盤。クレーメル・ファンにはお勧めの二枚組だ。
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