Chopin: Walzes, Barcarolle Etc.@Tatiana Shebanova |
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Chopin:
Waltzes Nos.1-14
3 Écossaises, Op.72 No.3
Barcarolle in F sharp major, Op.60
Berceuse in D flat major, Op.57
Tatiana Shebanova(FortePiano)
タチアナ・シェバノワ
NIFCは2001年2月に発効した「フレデリック・ショパンの文化遺産保護に関する法律」に基づく国立の研究機関でありショパンの音楽作品、関連遺産、その他文化的作品、ブランド(意匠権、肖像権、プレゼンス全般)の管理、保護、プロパガンダを統率するとある。NIFCでは「the real Chopin」と銘打ってショパン全集の制作を推し進めているが、このCDもその一部だ。
real Chopinとはショパンが生きた時代の楽器を用いること、また管弦楽やコンチェルトの場合にはピリオド・アプローチのオケを用いることを意味している。ピアノはErard (=エラール:Paris, 1849)または Pleyel (=プレイエル:Paris, 1848)社製を用いるそうで、このアルバムでタチアナ・シェバノワが弾いているのはエラール社製のフォルテピアノ。
昨今のピリオド・ブームのなか、モーツァルトやメンデルスゾーンをフォルテピアノで弾くケースが徐々に増えてきているが、大体その多くが弱々しい音で歪みっぽく、時にホンキートンクのような不調和な音の録音が多い。しかし、このエラールのフォルテピアノは完璧な調律と状態の良好な響盤、スチールフレーム、アクション機構が奏功してか、規模は小さいながら澄んだ音色を出している。
大音量の現代ピアノ、特に剛健なスタインウェイで弾かれるショパンがいまどきは一般的なのだが、ショパンの殆どの曲がパブリック・コンサート用の作品ではなくプライベート・サロン用の作品だったことを考えると、音が遠くまで飛ぶ現代ピアノではなく音量が小さく囁くようなフォルテピアノで弾かれるのが往時の環境をより忠実に反映しているのだろうと納得させられる風雅な響きだ。しかし、前時代的で古色蒼然とした音では決してない。
タチアナ・シェバノワは1980年のショパンコンクールで2nd Winner、即ち準優勝をした人物。因みにこの時の優勝者はダン・タイソンだった。シェバノワは来日公演も度々行っているのでこの名を目にしたことがあるかも知れない。ながらく未聴だった彼女のピアノだが、驚くほど詩的で叙情的、そして質量感が殆ど感じられないフェザー・タッチの超絶技巧であった。どの曲も素晴らしい曲想と解釈なのだがOp.34の3曲、Op.64の3曲が白眉。Op.64-No.1は子犬のワルツとして有名な曲。ややもすればサーカス曲芸よろしく速度と運指精度だけを誇る作品に成り下がっている様相を呈する昨今であるが、シェバノワの詩心は素晴らしいのひとこと。
(録音評)
NIFCレーベル、NIFCCD 005、通常CD。2007年5月19-20日、ワルシャワのWitold Lutoslawski Polish Radio Concert Studioでの録音とある。割とオンマイク気味に捉えられたフォルテピアノの音は美しい。張力の弱い低音弦が叩かれて膨張した音が響板から空間に放たれる様子が克明に録られている。楽器自体の音の色が暖色系、スタジオ録音なのに比較的豊かな残響も伴っていて期せずしてサロン風のアレンジとなっている。全体として大人の落ち着いた音調だ。
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