Mozart 13 Berg@Uchida, Tetzlaff, Boulez/Ensemble Intercontemporain |
今日は、DECCAの秋の輸入新譜から、内田光子、テツラフ、ブーレーズ、アンサンブル・アンテルコンタンポランのアルバン・ベルクなのだが、なんとモーツァルトが前座としてフィーチャーされている。内田は良いとして、ブーレーズ? アンテルコンタンポラン? のモーツァルト?? という疑問符連発のアルバム。しかも内田がPHILIPSではなく、ブーレーズがDGではなく何故かDECCAだというのも違和感がある。名門レーベルたちがユニバーサル傘下に吸い込まれた事を象徴するかの取り合わせだ。
http://www.hmv.co.jp/product/detail/2780372
国内盤はこちら↓
・モーツァルト:セレナード第10番「グラン・パルティータ」
・ベルク:ピアノ、ヴァイオリンと13の管楽器のための協奏曲
内田光子(ピアノ)
クリスティアン・テツラフ(ヴァイオリン)
アンサンブル・アンテルコンタンポラン
ピエール・ブーレーズ(指揮)
変わったアルバム・タイトルで、Mozart Berg 13なのか、13 Mozart Bergなのか定かではなかったが、iTunesにぶっ込んだらGracenote CDDBからMozart 13 Bergというタイトルが一番初めに出て来たのでこれにした。「13」とは13本の管楽器(=厳密には管だけではないが)によるアンサンブルを意味しているのだ。ライナーの対談録によれば、モーツァルトのグラン・パルティータもベルクのコンチェルトも、一応オリジナルでは基本は13本の楽器を中心とした指定になっているという共通点、そしてウィーン楽派から新ウィーン楽派に至る百有余年の歳月で何が変わったのか、を対比しようと言う趣旨のようだ。こういった時代考証的な趣向で作られたアルバムではベートーヴェン/シェーンベルク/アルバン・ベルクというのがあったが、一般的にはまま珍しいのではないだろうか。
ブーレーズのグラン・パルティータは恐いもの見たさであったが、実際に聴いてみたらやっぱり予感的中で相当に変だ。妙な場所でsfzが連発したり、快調に飛ばしている最中に主旋律が突然デクレッシェンドして、バセット・ホルンの対旋律やコントラファゴットの通奏低音が剥き出しになってみたりと意外性満載、滑らかで優雅なセレナーデというよりディヴェルティメントやインプロンプトゥという風情に仕立てられているのはブーレーズらしいと言えばらしいのだ。意外性ということで喩えるならヴァンスカのベートーヴェンの様なもので個人的には行けているモーツァルト。尚、当然の事ながら内田はここには登場しない。
ベルクのこれは素晴らしい。自宅では無調性12音技法をかけることは御法度なのでw 家族がいない時に再生しなくてはならず、従ってなかなか通しでゆっくり聴けなかった。この色彩感とバランスの良い「12」音の分散、強調、配置の妙が心地よい。特に最終楽章ロンドにおけるテツラフのドライでハイスピードな弦捌きと内田の紡ぐ純度の高いスケールは対比が美しくクリスタルグラスが割れて飛散するような強烈なインパクトと刺激が堪らない(などと言っていると家族から白眼視されるのだが・・)。
(録音評)
DECCA、4780316、通常CD。録音は2008年3月19-21日と最近のことで、場所はブーレーズの必然の選択=パリ・ポンピドー・センターのIRCAMである。DECCA特有の艶消しで深みのある音調を期待していたら、なんとも高解像度でディテールを細密に抉った現代最先端の音質であった。
モーツァルトの方はウィンド・アンサンブルが重層的で特に中~低音楽器(コントラファゴット、バセット・ホルン)の響きが心地よく、ベルクの方は空間の作り方や残響処理は実に巧妙で透明感溢れる捉え方。
ふとライナーのクレジットを見たら担当はPolyhymnia Internationalとあり、DECCAが何故に自社スタッフを使わず外部の録音ファームを使ったのか謎、これまた意外で奇妙な取り合わせだったのだ。
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