Tallis: 9 Psalm/Byrd: Motet@Stile Antico |
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Heavenly Harmonies - Byrd, Tallis: Stile Antico
Thomas Tallis (c.1505-1585)
1. 9 Psalm Tunes for Archbishop Parker's Psalter
(大司教パーカーのための9つの詩編歌)
William Byrd (c.1540-1632)
2. Motets - from Cantiones sacrae I & II(モテット)
3. Mass Propers for Pentecost - from Gradualia(ペンテコステのためのミサ曲)
合唱:Stile Antico スティレ・アンティコ
アルバム名のHeavenly Harmoniesは、「天上の和声たち」とでも和訳すればよいのであろうか。名は体を表すとはよく言ったもので、まさに天上の声が美しく調和して響き渡るのである。
大きくは三つの歌曲集が収められているのであるが、実は上記の1.と2.のそれぞれを構成する単独曲が互い違いに配列されているのだ。つまり、
1. Tallis: Psalm Tunes (9) for Mister Parker: no 3
2. Byrd: Motet: Liber primus sacrarum cantionum
3. Tallis: Psalm Tunes (9) for Mister Parker: no 5
4. Byrd: Liber primus sacrarum cantionum: Ne irascaris Domine
5. Tallis: Psalm Tunes (9) for Mister Parker: no 2
6. Byrd: Liber secundus sacrarum cantionum: Exsurge
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と言うように、奇数トラックにタリスの大司教パーカーのための9つの詩編歌が、偶数トラックにバードのモテットが入っている。何とも謎めいてややこしい配列だが、これはこれで制作者の意図が見えてくると納得できるものだ。タリスの大司教~はどれもが短くて簡潔なテーマが1分前後で歌われるのに対し、バードのモテットは比較的長く(数分から十数分)人間の喜怒哀楽と神への畏敬の念を重厚に歌い上げるという趣向であり、タリスの方が序章の役目を担っている。
スティレ・アンティコの和声は芯が明確で強く、時にか細く、そして神々しい響きである。このような無駄のない、それでいてよく聴くと短調と長調のフレーズを頻繁に織り交ぜてポリフォニーを構成する技法はバロック期のヴィヴァルディやテレマン、バッハの音楽とは不連続であるかに思われるのであるが、それぞれのパートが調和感を伴った別々の旋律を歌う点では対位法の原点と言えるのだろう。ノンビブラートにして発声が明瞭、語句の一つ一つが浮き出るような作風は教会音楽ならではのものだ。
スティレ・アンティコはかつてグラミー賞にノミネートされたという知る人ぞ知るルネサンス歌曲のエキスパート集団で、タリス・スコラーズにも匹敵する強い歌唱力と声の浸透力は凄いものがある。
(録音評)
Harmonia Mundi USAレーベル、HMU807463、SACDハイブリッド。このレーベルはHarmonia Mundi Franceの米国子会社であり、ドイツHarmonia Mundiとは現在のところ資本関係はない(ドイツの方はUniversal傘下となってしまったため)。会社はUSAにあるが制作と製版はEUとある。録音は2007年5月、All Hallows教会/ロンドンとある。
音質は超の上に超が付くほどの出来映えだ。DSD録音らしいのだが声が図太く隈取りがくっきりしている点ではPCMっぽさが感じられる。しかし、残響と長めのホールトーンの消え入り端はDSDらしいソフトな面描写であり、やはりDSD録音なのであろう。この教会の礼拝堂の響きは驚くほど美しい。そしてマイクアレンジが実に巧妙で、オフでもオンでもないちょうど具合の良いポジションから狙った小編成コーラス隊は左右バッフルに対し視野120度の範囲にぴったりと収まっている。
永らくPCMオンリーで頑張ってきた名門ハルモニア・ムンディもいよいよSACDハイブリッドへの転換期を迎えているようで、これからの更なる音質向上が楽しみである。
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