Mozart: Vn-Con@Mutter |
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お目当ては二枚目最後の協奏交響曲だけであったが、全くの期待外れ。バシュメットのヴィオラはダンゴのように重く、またムターのヴァイオリンも弾むことなく最後までオケに粘着したまま進んでしまう。
コンサート評などを読んでいても昨今のムターに関しては賛否が分かれるようで、絶賛と酷評が極端だ。
モーツァルトはもっと軽くシンプルに素材の味を活かした調理をして欲しいものだ。例えば、上質なヴィール(仔牛)のフィレ肉が塊で手に入ったとしよう。私ならばちょっと厚めに切り分けて、岩塩と細挽き黒胡椒を振って叩き、サッとグリルで焼いて食べたいところ。
しかし、ムターのモーツァルトは、バターたっぷりの赤ワインソースでヴィールを丸々煮込み、更に厚切りフォアグラをソテーしてガッツリ乗せました~。ついでにトリュフも散らしてみました~! みたいな濃厚かつゲップが出そうな演出なのだ。
どうも、これは食べたいと思う仔牛の料理ではない。勿論人それぞれだから賛否もあるわけで何とも言えないが個人的にはどうも頂けない。他の協奏曲についても全く同様の感想。
フランス料理、スペイン料理、イタリア料理・・・と、お国柄に応じた調理方法があるけれど、このモーツァルトはムター流の料理方法であり、もはや素材としてのモーツァルトの清潔な軽妙さを味わうことが出来ないほど加工されている。いわばムーツァルト。
(録音評)
ロンドンのアビーロード・スタジオでのマルチポイント録音。ユニバーサルクラシックとしては音質は最低の部類だろう。風呂場でラジカセを鳴らしたような暖色かつナローレンジの質感が気持ち悪い。何故この様な鼻づまりの調音をしたのか理解に苦しむ。ムターのソロにフォーカスが向いているのは分かるがオケが平面的すぎて面白くない。モーツァルトはもっと爽やかな音調で豊かな残響が似合う。これじゃ場末のキャバレーの雰囲気。