Britten & Hindemith: Vn-Cons@A.Steinbacher, V.Jurowski/RSO Berlin |
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Britten & Hindemith: Violin Concertos
Britten: Violin Concerto in D minor Op.15
Ⅰ. Moderato con moto
Ⅱ. Vivace - Largamente - Cadenza
Ⅲ. Passacaglia. Andante lento, un poco meno mosso
Hindemith: Violin Concerto
Ⅰ. Mäßig bewegte Halbe
Ⅱ. Langsam
Ⅲ. Lebhaft
Berlin Radio Symphony Orchestra
Vladimir Jurowski
Arabella Steinbacher (Vn)
・ベンジャミン・ブリテン(1913-1976):ヴァイオリン協奏曲 Op.15
・パウル・ヒンデミット(1895-1963):ヴァイオリン協奏曲
アラベラ・シュタインバッハー(ヴァイオリン※)
ウラディーミル・ユロフスキ(指揮)
ベルリン放送交響楽団
※ 1716年ストラディヴァリウス・ブース:日本音楽財団貸与
アラベラの新譜は近現代もののカップリング
アラベラの録音についてはOrfeo時代から現在まで随分と聴いてきているし今更なのだが、ここへ来て近現代ものだけのカップリングをリリースしてきた。ライナーのアラベラの言を借りれば、ブリテンとヒンデミットはほぼ同時期にこれらのコンチェルトを書き上げた、というのがカップリングに選んだ理由なんだろう。なお、アラベラが弾いた近現代ものはOrfeo時代から数えれば既に多く出ていて、例えばバルトーク、ブルッフ、コルンゴルト、ショーソン、アルバン・ベルクなど。以下、キングインターの販売促進用テキストから。
シュタインバッハーがブリテンとヒンデミットのヴァイオリン協奏曲を録音
目覚ましき活躍のヴァイオリニスト、アラベラ・美歩・シュタインバッハー。当アルバムではユロフスキ率いるベルリン放送交響楽団とブリテン&ヒンデミットのヴァイオリン協奏曲を収録しました!20世紀イギリスの最大の作曲家ブリテン。ヴァイオリン協奏曲は1939年ケベック州サン・ジョヴィットで書き上げられ、翌40年3月にアントニオ・ブローサ独奏、バルビローリ指揮ニューヨーク・フィルハーモニックで初演されました。なお、1958年に一部改訂され、ブロニスワフ・ギンペル独奏、ビーチャム指揮ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団により演奏されました。美しさと力強さを兼ね備えた高音域に及ぶ独奏ヴァイオリンが実に印象的です。超絶技巧の持ち主でもあるシュタインバッハーらしく実に堂々たる演奏を披露しております。一方、ヒンデミットは作曲者としてだけでなくヴァイオリニスト、ヴィオリストとして活動していた関係から弦楽器の作品を多く残しました。1934年、ナチスにより無調的作風など、その現代的傾向の音楽が腐敗した芸術であるとされ圧迫をうけたために翌35年に休職、38年にスイスに移り、大戦を避けて40-47年にはアメリカに移り住みました。ヴァイオリン協奏曲は指揮者メンゲルベルクの委嘱作品で初演は1940年、メンゲルベルク指揮アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団、ヴァイオリン独奏はコンサートマスターのフェルディナント・ヘルマンでした。シュタインバッハーは持ち味である豊かな表現で歌い上げます。ユロフスキの絶妙な好サポートのもとシュタインバッハーの"今"を知れる大注目盤のリリースです!
キングインターナショナル
ブリテンはさらさらと流れるがテンペラメントがほとばしる
今回の2曲はいずれも大規模なコンチェルト。このブリテンの作品は自由な様式で調性が定まらず、一部では調性が不明瞭。さりとて無調性音楽ではない。弾く側は独奏を含めオケや指揮者の力量も試される解釈および技巧の面で多くを要求する作品である。ブリテンの作品は結構この夢遊感が好きで今までかなり聴いてきた。
1楽章。ティンパニの付点リズムで開始、すぐにアラベラの脆そうな独奏が入る。ここから終楽章に至るまで全体は長調で支配されるが、途中で移調、また転調を繰り返すので調性がよく分からず不安を煽るのがブリテンの狙いだろう。明媚で非和声の主題がアラベラの手により弾き出されるが、これが堂々たる提示で、好感度が非常に高い。中間部からは、他のロマン派では緩徐楽章に相当するパート。アラベラの揺蕩う操弦は素晴らしいのひとこと。実に柔らかだ。コーダにかけては高音のE線のみで糸を引くように静かに紡がれる。2楽章は緩徐楽章ではなく異例なことにスケルツォに相当する諧謔楽章。ここは極端な対位法表現でオケとアラベラの独奏部は乖離した旋律・和声を弾くが不思議に違和感がなく溶け合っている。技巧的には高速グリッサンド、3~4度のダブルストップ、更には3~6度の任意のトリプルストップとかなり厳しそうだ。しかも高音弦が主体だ。展開部を経て冒頭主題を再現するところで長いカデンツァ。そのまま3楽章に無休止で突入。息をのみ静かにアラベラの凄いポルタメントに聴き入ってしまう。オケも独奏も非常に長い持続音でゆったり目の上昇パッセージを聴かせてくれる。この辺の集中力はさすが。3楽章後半は打って変わって阿鼻叫喚、だが、一気にフェードアウトして静謐なまま謎の終わりへ。
ヒンデミットは更にデモーニッシュ、だがアラベラの語法は闊達
ヒンデミットのVnコンはブリテンのVnコンと似た非和声中心の協奏曲だが、もちろん風情はまるで異なる。1楽章、偶然だろうがブリテンと同様、ティンパニの2連打で始まる。唐突にアラベラが強めに高揚した高音弦で主題を提示し、ちょっと盛り上がるところがまた印象的。2楽章は緩徐楽章に相当。概ね穏健な展開が続き中間部に向けては静謐なパートでアラベラの活躍が目立つ場所だ。オケと独奏Vnのダイアログが続く。3楽章は静かな入りだが、中間部からは丁々発止という表現が正しいかどうか分からないが独奏Vnとオケとが婉曲な対位法表現で対峙していくスケルツォ的な展開。中間部の終わりに差し掛かってからは一転して静かにゆったりとして、ここが第二の緩徐部にあたるセクションと思われる。個々の構造は2楽章の緩徐部に似ていて、さっき聴いたような抑揚表現だよな?と思わされる。ここからアラベラの独奏はE線とA線の高音へと傾倒したかと思ったら今度はD線とG線を主体とした低音での副主題提示となる。オケは静かであまり主張しないことから準カデンツァ部と思われる。そこを過ぎると一気呵成にオケがトゥッティをいくつも作り、アラベラの弦はE線主体で高音域で展開、コーダへ向かう。素晴らしい出来だ。
録音評
PentaTone Classics PTC5186625、SACDハイブリッド。録音は2017年4月、べニューはHaus des Rundfunks, RBB, Berlin, Germanyとある。この盤はSACD層の音質が素晴らしく、音場空間の展開が奥へとぐんぐん延びることとアラベラのVnの弦があたかも松脂で濡れているかの描写をしたSACD層に一日の長がある。もちろんCD層も悪くはないが、印象としては普通+αといったところ。ハイビット録音はやはり気持ちが良いのである。
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