Saint-Saens: Sym#3 & Carnival@Antonio Pappano/OAN Santa Cecilia, Martha Argerich |
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Saint-Saëns:
Symphony No.3 in C minor, Op.78 'Organ Symphony'
Ⅰa. Adagio - Allegro moderato
Ⅰb. Poco adagio
Ⅱa. Allegro moderato - Presto
Ⅱb. Maestoso - Allegro
Le carnaval des animaux
No.1 Introduction and Royal March of the Lion
No.2 Hens and Roosters
No.3 Wild Asses
No.4 Tortoises
No.5 The Elephant
No.6 Kangaroos
No.7 Aquarium
No.8 People with Long Ears
No.9 Cuckoo in the Heart of the Woods
No.10 Aviary
No.11 Pianists
No.12 Fossils
No.13 The Swan
No.14 Finale
Orchestra dell'Accademia Nazionale di Santa Cecilia
Antonio Pappano
Daniele Rossi (Org)
Martha Argerich (Pf), Antonio Pappano (Pf) (carnaval)
サン=サーンス:
交響曲第3番ハ短調 Op.78「オルガン付き」
組曲「動物の謝肉祭」
アントニオ・パッパーノ指揮、 聖チェチーリア国立アカデミー管弦楽団
ダニエレ・ロッシ(オルガン)
マルタ・アルゲリッチ(ピアノ)、アントニオ・パッパーノ(ピアノ)
聖チェチーリア管弦楽団 ソロイスツ
アントニオ・パッパーノについて
パッパーノは私と同じ歳のイタリア人指揮者。イングランドのエセックス州エピングでイタリア人の両親のもと出生、13歳で渡米しピアノと指揮法を学ぶ。1989年ノルウェー・オペラでオペラ指揮者としてデビュー、1992年ブリュッセル・モネー劇場の音楽監督、2002年コヴェント・ガーデン・ロイヤルオペラ総音楽監督に就任。
一方、交響楽分野では1997年からイスラエル・フィルハーモニー交響楽団の主席招待指揮者、2005年からこの盤で率いた聖チェチーリア国立アカデミー管弦楽団の音楽監督に就任。オペラ、また交響曲のコンサートでも活躍する。また、目立たないがピアニストとしても活動している。
パッパーノは陽性のメンタリティ、スケールの大きな解釈をする指揮者で後期ロマン派をやらせたらダイナミックで明媚なバトンを捌く。一方でドイツロマン派などでは翳りのある重層的な表現もじょうずで、実は硬軟の出し入れで巧みな適応力を示す指揮者でもある。個人的には若手~中堅ではグザヴィエ・ロト、クリスティアン・ヤルヴィ、ネゼ=セガンらと並び、パッパーノも応援している。
この録音について
以下、ワーナーの販促用解説を引用しておく。(原文ママ:誤記、誤訳あり)
アントニオ・パッパーノによる久々の荘厳なる管弦楽作品録音登場!『動物の謝肉祭』では、アルゲリッチが参加!『サン=サーンス:交響曲第3番』は、1885年ロンドンのロイヤルフィルハーモニック協会が、次のシーズン用の新曲としてドリーブ、マスネ、サン=サーンスに作曲を依頼。初演は1886年5月19日、作曲者自身の指揮によりロンドンで演奏で行われ、まずまずの成功を見ました。大成功を収めたのは、翌年1月の故郷パリでの初演で、雑誌「ル・メネストレル」はこの演奏会について「ブラヴォが終わらないのではないかと思われるほど聴衆が熱狂した」と記しています。
この曲の成功によりサン=サーンスは「フランスのベートーヴェン」と称えられるようになりました。循環主題技法の創造的な用法、オルガンが使用された迫力あるクライマックスは、パッパーノ&サンタ・チェチーリア管の、このコンビならではのレパートリーによる濃密な演奏を堪能できます。そして『動物の謝肉祭』では、マルタ・アルゲリッチとアントニオ・パッパーノが、ピアニストとして参加!サンタ・チェチーリア国立アカデミー管弦楽団の首席奏者たちとのコンビで、すべての生き物の中で最もエキゾチックなものとして、非常に稀で宝石のようなペアリングによって生き生きと、そしてシャレを組み込んだ楽しいものになっています。
ワーナーミュージック・ジャパン
オルガン付き
この曲は交響曲と言いながら全2楽章形式の変則な造り。だが、各楽章の内部は独立した2つのパートから成っていて、そういった点では通常の4楽章形式と見做しても良い。この曲の構造は他サイトに詳しいのでこれくらいにする。
冒頭は普通に穏健な入り。その後の第1主題は循環主題として以後のパート/楽章へ引き継がれる重要な最初の提示となる。弦楽隊にとっては厳しいパートで、1つの休符以外は全て小刻みな16分音符で埋められたスタッカートを漣のように延々と刻んで行く。パッパーノは譜面指示のアレグロ・モデラートよりかは速いバトンで突き進んで行く。ライブ収録ということも影響したのかもしれないが巧者で知られるチェチーリアの各パートの面々が時々詰まってしまうくらい速くて強いテンポ指示と思う。
しかしこれが奏功し中間部では力が抜けたチェチーリアの本領発揮。実に伸びやかで気持ちの良い展開部となる。後半は通常の交響曲では緩徐楽章に相当する。ここは例によってオルガンのプリンシパル、つまり単列ストップの低音フルー管の先導で始まる穏健な美しい第2主題の提示となる。前半部とは打って変わったメロディアスで泣かせる進行はパッパーノのイタリアの血、そしてオペラ監督としての長年の経験がなせる業かも知れない。ここで前半の急いだテンポどりとのコントラストが生きて来るのだ。前半の主題が回想のように短く再現され楽章のコーダへ。
2楽章の第1主題は重いけれどもハイスピードのプレスト指定。それも実際はかなり速い。この主題は1楽章第1主題の変形であって、楽章を越えた巡回再現を見せる部分。一方、中間部からは高揚するような勇壮な長調、そして巡回主題が再びちらちらと顔を見せながら変奏が進む。パッパーノのバトンは縦横無尽で速め指示を出してアチェレランドで咳き込んだと思うと、直後に一気にリタルダンドで止めてみたりとかなり煩瑣で微細な演奏設計だ。
後半部は普通の交響曲でいえば4楽章のフィナーレ。有名な冒頭はオルガンの強いプレヌムで始まる。まさに荘厳にして華麗としか言いようがない。このオルガン奏者=ダニエレ・ロッシとパッパーノのバトン、チェチーリアの面々のタイミングがぴったり合っていて素晴らしいシンクロ。ライブとは思えない。そのあと低音のプリンシパル、中音のプリンシパルとストップを交互に繋ぎ、再びプレヌムが咆哮すると劇的で起伏に富んだ中間部へ。ここでのパッパーノの意図は明確で、各パートの調和ではなくてバトル、つまり全パートに全パワーの放散を要求している。よって音数がもの凄く多く、通常の演奏では聴かれないような内声部がマグニファイされ、この曲、こんなだっけ? というインプレッションを抱かされる。
謝肉祭
これは凄い演奏だ。しかもアルゲリッチ参加の新録音。全部が凄すぎるのでいくつか掻い摘むに留める。これは真価を知るには聴くしかない。
ところで、アルゲリッチと謝肉祭と言えば、このフィリップスの名盤を挙げざるを得なく、我が家では長きに渡りリファレンスとして来たものだ。
#3騾馬はアルゲリッチとパッパーノのピアノ連弾だが、前作のフレイレとの連弾よりも明らかに巧い。#5象のコンバスを弾いているのはチェチーリアの首席Cb奏者らしいが凄く深い音を軽妙に出していて驚いた。 #7水族館はPf、Vnの張りつめた主旋律に合わさるVcのふくよかさ、FlとPerc(グラスハーモニカ)の透明度が何とも言えない。
#9郭公は、重いPf連弾の伴奏にClが文字通り郭公の囀りを模倣。二人のPfがシナジーして素晴らしい響き。こんなに綺麗な和音を2台ピアノが出せるものなのか。#10鳥籠のPf連弾、音数が多いのだ。じつはパッパーノはピアノが尋常じゃなく巧いことがよく分かる短いパート。#11ピアニストは譜面指示によれば、へたくそに弾かなければならないが、アルゲリッチとパッパーノはピアノがもともと超絶巧いためか下手さ加減の演技が超ヘタで巧く聴こえてしまうのが最大の難点。
#13白鳥はびっくり。このVc、多分チェリーリアの首席なんだろうが、めちゃくちゃ巧い。前のマイスキーなんて霞むくらい可憐なくせに重層感も影も光もちゃんと弾き分ける。Pfは1台に聴こえるがどうやら2台というのが本当。#14終曲、音数が極めて多く、しかも奏者みんながあまりに巧い、音楽が生きていて楽しい・・、もう阿鼻叫喚。家のスピーカーに向かってブラボーを叫んでしまった。
録音評
Warner Classics 9029575555、通常CD。録音はオルガン付き:2016年4月、べニューはローマ、オーディトリウム・パルコ・デラ・ムジカ(ライヴ収録:拍手入り)、謝肉祭:2016年11月、べニューはローマ、サラ・ペトラッシとある。音質は新生ワーナー史上最高と言っておこう。オルガン付きはライブながら緻密で臨場感に満ち溢れた超優秀録音。サウンドステージの再現はもとより、全体のパースペクティブが凄まじく、オルガンのストップ開閉のノイズまで入っている。謝肉祭は従前には類例を見ないほどの超高解像度録音で、面白いくらいに楽器のディテールが見え透く。
実は1か月後に出た国内版はSACDハイブリッドだったのでそっちにするかどうかで悩んだ。結局、売価が倍以上違うので輸入の通常CDにしたが、これだったらSACDハイブリッドを買う意味がないほど優れた音で、オーバーサンプリング・コンバーターの能力を最大限まで使い切ったビットマッピング効果が完璧に発揮されていると言える。音楽ファンはもちろんだが、音にうるさいオーディオ・ファイルにも断然お勧めできる一枚。但し、装置の性能限界が試されるので勇気のない人は忌避しておいた方が身のためだ。
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