Sibelius: Piano Works@Leif Ove Andsnes |
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Sibelius:
Six Impromptus Op.5
#5 Impromptu in B-Min: Vivace
#6 Impromptu in E-Maj: Comodo
Kyllikki - Three Lyrical Pieces for Piano Op.41 #3
Ⅰ.Largamente - Allegro
Ⅱ.Andantino
Ⅲ.Commodo - Tranquillo
Ten Pieces for Piano Op.24
#9 Romance in D-♭ Maj: Andantino
#10 Barcarola: Moderato Assai
Ten Pieces for Piano Op.58 #4 Der Hirt: Vivacetto
Valse triste Op.44 #1: Lento (Arranged for Piano)
Sonatina #1 in F#-Min Op.67 #1
Ⅰ.Allegro
Ⅱ.Largo
Ⅲ.Allegro moderato
Five Pieces for Piano Op.75
#4 Bjorken: Allegro
#5 Granen: Lento - Resolute - Lento
Two Rondinos for Piano Op.68 #2 Rondino: Vivace
Therteen Pieces for Piano Op.76 #10 Elegiaco: Poco Agitato
Six Bagatelles for Piano, Op.97
#5 Impromptu: Poco Moderato
#4 Humoristischer Marsch
#2 Lied: Andantino
Funf Skizzen Op.114
#1 Landschaft: Andantino
#2 Winterbild: Allegretto
#3 Der Teich: Con Moto
#4 Lied im Walde
#5 Im Fruhling
Leif Ove Andsnes (Pf)
レイフ・オヴェ・アンスネス/シベリウス:ピアノ名品集
シベリウス:
1.6つの即興曲 作品5より
(1)即興曲第5番*
(2)即興曲第6番
2.キュリッキ(3つの抒情的小品) 作品41
(1)第1曲 ラルガメンテ
(2)第2曲 アンダンティーノ
(3)第3曲 コモド
3.ピアノのための10の小品 作品24より
(1)第9曲 ロマンス*
(2)第10曲 舟歌
4.ピアノのための10の小品 作品58より 第4曲 羊飼い
5.悲しきワルツ作品44の1(ピアノ独奏版)
6.ソナチネ第1番作品67*
(1)第1楽章 アレグロ
(2)第2楽章 ラルゴ
(3)第3楽章 アレグロ・モデラート
7.ピアノのための5つの小品(樹木の組曲) 作品75より
(1)第4曲 白樺の木
(2)第5曲 樅の木
8.ピアノのための2つのロンディーノ 作品68より ロンディーノ第2番*
9.ピアノのための13の小品 作品76より 第10曲 エレジアーコ
10.ピアノのための6つのバガテル作品97
(1)第5曲 即興曲
(2)第4曲 おどけた行進曲
(3)第2曲 歌
11.5つのスケッチ作品114
(1)第1曲 風景
(2)第2曲 冬の情景
(3)第3曲 森の湖
(4)第4曲 森の中の歌
(5)第5曲 春の幻影
*2016年の来日公演で演奏された曲
レイフ・オヴェ・アンスネス(Pf)
アンプロンプテュ(即興曲)Op.5~キュリッキOp.41
冒頭の#5は、暗いけれど透明でさらさらとした入り。右手が奏でるオクターブ・ユニゾンが美しく、そして左手が支えるベースラインが濁りなく美しい。#6は日向の暖かな雰囲気の三拍子。導入部から美音が響き渡るが、中間部から後半にかけて暗転する。次いでのキュリッキの#1はデモーニッシュな作品で、直截的と思われがちなシベリウスだが、実は鬱屈した部分も多分に持ち合わせていたことが分かる名曲。#2はアンダンティーノ指定で、これもまた暗い。雪国育ちの私には何とはなしに分かるアンニュイな風情がよろしい。中間部からの不安なトレモロ装飾譜によるちょっと非和声に振ったあたり、及び明転する日光のような長調の展開が独特で、こういった明暗入り乱れた場面のアンスネスの表現力は真骨頂で、これは聴き惚れるしかない。#3は明るい入りでコケティッシュな風情を前面に押し出すがこれまた暗転するのだ。転調を多重に繰り返しつつ駆け抜ける足の速い展開。ここは割とテクニックを要するところだが、やはりアンスネスの技巧面での充実ぶりは流石という他ない。
Op.24、Op.58~悲しきワルツ
Op.24のロマンスはびっくりするほど抒情的な作品。アンスネスはゆっくりした展開で歪感皆無で紡いでいく。続くバルカローレは割と暗めだが暗黒までは行かないエナジー感の少ない低演色度の作品。ショパンなどの舟歌を思い浮かべてはいけない。白夜の国の作家の目に浮かぶ舟歌はこんな感じなのか、という認識を持たされる。ここでのアンスネスのトレースは非常に瞑想的。Op.58からは一曲のみで羊飼いが入る。明暗が入り混じる速足の作品で、譜面を見て頂ければわかると思うがこの曲は素直に聴こえる裏側には困難な運指が要求されている。アンスネスは事も無げに一気に軽く弾き抜けて行く。
超有名曲の悲しきワルツだが、アンスネスが弾くこの独奏版の出来栄えは極めて異色で、そして素晴らしい出来栄え。我々はオケ版を耳にするのが通常だろうが、この独奏版の音数の多さはなんなんだろう。大きく揺らがせながらパウゼを多用、そして長い空白を作り出し、その空疎な部分に歌心を注入することで仮想的な和声を幾重にも作り出して聴き手に迫って来るのだ。これを聴く限り、アンスネスはやはり今世紀の巨匠の一人と数えられることとなる人物と思う。
ソナチネOp.67~小品集Op.75
ソナチネの3楽章は、リスト/パガニーニのカンパネラ、あるいはマゼッパのようなオクターブを越える分散和音による高速打鍵が組み込まれた難曲。アンスネスにとっては全く難しくはないようだが。綺麗な鐘の音が響き渡る。Op.75は邦題では樹木の組曲とタイトルされた異色の小品集。今回二つ入れている後ろの方の#5は、飛び切りメロウで美しいことこの上ない旋律が特徴のバラード。アンスネスの微細にして女性的とも思えるソフトでシルキーなキータッチが冴え渡っている。
ロンディーノ~バガテル
ロンディーノ#2はヴィヴィッドで短い曲だが、かなりの難曲。可愛らしい風情が特徴か。エレジアコも同様だがちょっとスローで切ない雰囲気。バガテルからの抜粋はどれもが不可思議系で夢見るような曲想の作品たち。#5は即興曲と銘打っているだけあって転調が激しく浮遊する不安定感が面白い。続くHumoristischer Marschはユーモラスなマーチ(あるいは3月)と名付けられた小曲で、ショパン:仔犬のワルツ以上のアクロバティックな技巧が要求される。
5つのスケッチ
これらは初めて聴く。荒涼とした光景が目に浮かぶ佳曲たちだ。シベリウスについてはフィンランディアや交響曲ばかりが有名だが、実は優れたピアノ曲作家でもあったということをこの曲たちを通して世に広めたいというアンスネスの熱意、愛情が感じられる解釈、設計、演奏となっている。白夜に浮かぶモノクロームの大地、森林、雪原・・、そういった情景描写が秀逸な作品で、まさに音による冷涼感を表現していると言える。
録音評
Sony Classical 88985408502、通常CD。録音は2016年12月8日~10日、ベニューはお馴染のベルリン、テルデックス・スタジオ。プロデューサー:ジョン・フレーザー、レコーディング・エンジニア:アーン・アクセルバーグとある。音質だが、従前のソニーの暗めの音型をベースに高解像度に振った香り高いチューニングで、とても綺麗なピアノ録音に仕上がっている。
アンスネスのファンにも、またオーディオファイルにもお勧めできる超優秀なピアノ録音。大手レーベルが優秀なピアニストをセッション録音で真面目に収録するとこうなるという一種の矜持がひしひし感じられる完全無比の一枚と評価しておく。昨今、こういった美麗で完璧なCDにばかり出会うのだが、欧州クラシック録音の世界ではいったい何が起きているのであろうか・・。
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