Schubert: 4 Impromptus D899 Etc@Mona Asuka |
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Mona Asuka plays Schubert and Liszt
Franz Schubert:
4 Impromptus, Op.90, D899
No.1 in C Minor
No.2 in E-Flat Major
No.3 in G-Flat Major
No.4 in A-Flat Major
Franz Schubert - Franz Liszt:
12 Lieder von Schubert, S.558
No.2 Auf dem Wasser zu singen
No.3 Du bist die Ruh
No.9 Ständchen von Shakespeare
No.11 Der Wanderer
Franz Liszt:
Années de pèlerinage II, Supplément, S.162 "Venezia e Napoli"
No.1 Gondoliera
No.2 Canzone
No.3 Tarantella da Guillaume Louis Cottrau
Mona Asuka(Pf)
モナ=飛鳥・オット: シューベルト/リスト
シューベルト: 即興曲集 D899 Op.90
1.第1番:ハ短調
2.第2番:変ホ長調
3.第3番:変ト長調
4.第4番:変イ長調
シューベルト: 歌曲集(リスト編)
5.水の上で歌う
6.君はわが憩い
7.セレナード
8.さすらい人
リスト: 「巡礼の年」よりヴェネツィアとナポリ
9.ゴンドラの漕ぎ手
10.カンツォーネ
11.タランテッラ
モナ=飛鳥・オット(ピアノ)
Mona Asuka: モナ=飛鳥・オットについて
▶ 以下、Wikiより引用
モナ=飛鳥・オット(モナ=あすか・オット、Mona-Asuka Ott、1991年 - )は、ドイツ・ミュンヘン出身のピアニスト。コンクール受賞歴や各国の音楽祭への出演が多数ある。カール=ハインツ・ケマリンク及び、ベルント・グレムザーに師事。姉のアリス=紗良・オットもピアニスト。
父親がドイツ人で母親が日本人のハーフ。2歳からピアノを始めて4歳で初舞台を踏む。グロートリアン・シュタインヴェーク国際コンクール第1位、EPTA欧州ピアノ教育者連盟国際コンクール第1位並びに特別賞等の受賞歴がある。
2004年リンダウの国際青年ピアノ音楽祭へ招かれて以来、ミュンヘンのガスタイクやプリンツレーゲンテン劇場、ウィーンのコンツェルトハウス、アムステルダムのコンセルトヘボウ、ブラウンシュヴァイク・クラシック・フェスティバル、ルール国際ピアノ音楽祭、キッシンゲン夏の音楽祭、ラ・ロック・ダンテロン国際ピアノ音楽祭、メックレンブルク・フォアポメルン音楽祭等のフェスティバルに出演して高い評価を得る。
2009年にはバイロイト音楽祭でリサイタルを行った。同年、2010年と南西ドイツ・フィルハーモニー交響楽団の欧州、日本、2011年ザルツブルク・モーツァルテウム管弦楽団の日本ツアーのソリストに抜擢される。2012年オーケストラ・アンサンブル金沢の全国公演へ参加する。
ヨーロッパの権威誌「フォノ・フォルム」にて賞賛された。2011年グシュタード音楽祭での優れた演奏に対し、フィリップ・チャイナット賞を授与された。
2000年~2008年カール=ハインツ・ケマリンク及び、2012年現在、ヴュルツブルク国立音楽大学のベルント・グレムザーに師事している。
要するに、現在では国際的に活躍し日本でも一定の人気を博しているアリス=紗良・オットの3歳下の妹が、なんとドイツ名門OEHMSからデビュー盤を出したというお話。今回のこれがデビュー盤というのはちょっと意外で、というのは、日本国内での彼女のリサイタル、及び彼女をソリストとして招聘したPコンのコンサートは割と頻繁に挙行されていたからだ。しかしながら、それらの演奏会の数少ないレビューを拾ってみると、必ずしも芳しい感想は見当たらないのだった。
彼女の芸名だが、OEHMSも欧州の音楽サイトも"Mona Asuka"と表記していて、Mona-Asuka Ottではないところがお姉ちゃんへの対抗意識が垣間見られるところか。と、そういった身近に成功した人物がいる後進の演奏家という関係性からか、とかくフィルターを通して見てしまいがちなのかもしれない。なお、個人的にはアリスのアルバムは文句を言いつつもデビュー以来何枚か聴いてきた。なのでその出来栄えからは今回のモナの盤にも殆ど期待せず、逆に虚心坦懐に聴くことができた。
即興曲Op.90全曲
これまで音楽祭の出演模様などを収めたオムニバス的な録音はあったようだが、このCDはOEHMSからの初録音で、かつ個人の単独アルバムとしては正式なデビュー盤と位置付けられるようだ。それにしても随分と大胆で渋く、そして勇気の要る選曲だと当初は怪訝に思った。
ところが、最初の即興曲#1ハ短調に針を降ろしたその瞬間、ダーンと頭を殴られたような衝撃を受けた。冒頭の長音の打撃、その減衰後に現れる寂寥感に満ちたこの名旋律はどうだろうか。抑制的でありながら堂々とした緩やかなスケール取りはただ者ではない。シューベルトのこの時期の作品はコントラプンクトゥスとホモフォニックとが交錯する複雑にして深い味わいの和声が多いのであるが、これらを完全に手中に収め、彼女なりの解釈として咀嚼し聴くものに訥々と提示してくるのだ。言いたいことがここであるのだが、それは先送りし、更に前へ進む。
#2は右手の高速スケールが技巧的には難しいし、左手は何気ない伴奏に聴こえて実はベースラインを作るには右手の呪術的な高速打鍵に騙されない左手の強打鍵がキーとなる。#3は一転して抒情的な若い頃のシューベルトのロマンチシズムが迸る佳曲。力強さだけが特徴ではないことをモナはここでしっかり発揮している。これは平易に聴こえる曲なのだが実は左の通奏低音とオブリガート、そしてそれらの補助をする右手の交錯がかなりの難敵で、特に右手は主旋律を叩きながら左の対旋律を小節の後半において煩瑣にサポートするという特異な技巧を要求する。最終曲アレグレットは落ち葉が一枚ずつ剥がれ落ちるような分散和音的な下降スケールが特徴的で、これは技巧的には右手への要求が多い。これまで左手の強点を聴かせてきたが、ここではモナのテクニックは全域に渡り確かなものがあることを証明している。素晴らしい。
シューベルト:歌曲集(リスト編)
この辺りは短めにコメントするに留める。冒頭、水の上で歌うは、伸びやかな主部と暗転した短調部が頻繁に交差する激しい曲。モナの解釈は完全に大人だ。
次の次は超有名曲であるシューベルトのセレナーデだ。これは誰が弾いても同じようにセンチメンタルで美しく儚い夢想的な雰囲気かと思われるが、実は譜面上からもわかる通り、遅いテンポであり、かつ音数が少ないので解釈により聴こえ方は千差万別でソリストごとにもかなり違うのだ。モナの弾き方は分かり易い。即ち、過度なセンチメンタリズムには流れず、淡々と乾燥気味なテンションで強めのタッチを維持する。それでもシューベルトが持つ正統ドイツ・ロマン派の音を確かに引き出している。
リスト: 巡礼の年から
ここも短めに。冒頭ゴンドラだが、ここまでのシューベルト色から解き放たれたモナは、表現は悪いがやりたい放題、というか、純度の高いヴィルトゥオージティにも完全適応できることを如実に示しているし、また、演奏設計上の捉え方は構図が大きく非常に大胆な弾き方に聴こえる。事実、技巧的には相応以上の水準だし、何を弾かせても不安はないところでこの堂々たる解釈の提示には畏れ入る。
カンツォーネがまた素晴らしい。これほど深く重たい左手を使うピアニストは中堅から巨匠レベルまで探してもそうそういない。空白とフェルマータの多い曲だが、モナは無音へ減衰する時間をも利用した絶妙な間合いを描き出している。最終曲に持ってきたタランテラはまさにリストの特質といってよい超絶技巧を要する難しい曲。16分音符の三連符により形成される執拗なトレモロが終始鳴り響く、手の甲が攣るようなクレージーな曲。ここでは左手による野太いオブリガートが強めに弾かれ、両方の手のエネルギーバランスは完全に保たれる。甘美で穏和な中間部は打って変わった伝統的ロマン派の作風。ここでもモナの演奏設計は完璧な構築美を見せる。そしてコーダに向かった冒頭主題の再現と変奏はエネルギッシュで圧巻としか表現できない。
モナ飛鳥:まとめ
サラの妹という捉え方をすると完全に見誤りだ。モナはサラとはまるで違った個性を持ったピアニストで、メロウでセンシティブなお姉ちゃんを超越した剛健なピアニズムを備えた本格的なヴィルトゥオーゾと言い切って良い新鋭なのだ。モナは太い構図でアグレッシブに攻めるピアニスト、対するお姉ちゃんは精緻で微細、そして揺動する女性的でロマンティックなピアニストと言えようか。彼女とお姉ちゃんとの精緻な比較は敢えてしないが、個人的にはモナの将来に向けた可能性に大いなる期待を寄せる。
録音評
Oehms Classics OC1871、通常CD。録音は2017年3月9~11日、ベニューはBavaria Musikstudios,Munchenとある。音質は典型的なOehmsのもので帯域を無理に欲張らず、内部の稠密さに重点を置いたもの。しかし、細部を聴き込むと低域のレスポンスと立ち上がりは素晴らしく、また中高域のブロードな周波数特性は特筆ものだ。使用したピアノは明示されていないが、提供会社がPiano-Fischerとあり、そこを見るとピアノの専門店であり、調律や調整を生業とした会社のようだ。経験から言うとスタインウェイだと思われるのだが、低域の充実はベヒシュタインかファツィオリの音に近いものがある。いずれにせよ密度の高い良い音のピアノだ。楽器の固有音にもましてモナのピアニズムはストレートでピュア、そしてパワフルであった。
以下はプロモーション動画:
https://youtu.be/n3wn4I9GI1w
これは、松尾楽器での即興演奏(カンツォーネ)=もの凄いオーラが漂う:
https://youtu.be/i9pc4MdFJ8I
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