Bloch: Schelomo & Dvorak: Vc-Con@Mark Coppey,K.Karabits/DSO Berlin |
http://tower.jp/item/4515793
Bloch: Schelomo
Dvorak: KLID(Waldesruhe/Silent woods) for cello and orchestra, Op.68-5
Dvorak: Cello Concerto in B minor, Op.104, B.191
Ⅰ. Allegro
Ⅱ. Adagio ma non troppo
Ⅲ. Finale: Allegro moderato
Deutsches Symphonie-Orchester Berlin
Kirill Karabits
Marc Coppey (Vc)
(1)ブロッホ: ヘブライ狂詩曲「ソロモン」~チェロとオーケストラのための
(2)ドヴォルザーク: 森の静けさ B.182
(3)ドヴォルザーク: チェロ協奏曲 ロ短調 Op.104
マルク・コペイ(チェロ;ゴフリラー(1711年製))
キリル・カラビツ(指揮)
ベルリン・ドイツ交響楽団
マルク・コペイについて
マルク・コペイ(コッペイとも表記)はフランス・ストラスブール生まれのチェリスト。パリ国立音楽院で学んだ後に渡米し、ブルーミントンのインディアナ大学で演奏法を学びプロの道へと進む。その途中と思われるが、弱冠18歳でバッハ国際コンクールで優勝したことで一部からは神童と称せられたようだ。この受賞をきっかけに国際的なステージで活躍し始め、ソリストとしてはインバル、クリヴィヌ、ギルバート、佐渡裕などとオケで共演、またミッシェル・ベロフ、オーギュスト・デュメイ、ヴィクトリア・ムローヴァら世界的かつカリスマ的な奏者たちとの共演も好評を博すに至っている。一方、小規模アンサンブルにおいても素晴らしいリレーションを発揮し、その深い洞察でイザイ・カルテットで目覚ましいリーダーシップとパフォーマンスを発揮した。ソロ活動に加え、現在では母校のパリ国立音楽院の教授として後進の指導にあたっている。なお、コペイがしっかりと共演した演奏としては、デュボワのMIRARE盤が印象に残る。
ブロッホ: ソロモン
重厚な作品であり、かつ解釈の難しい曲。さりとてシェーンベルクや武満、アルバン・ベルクのような無調性ではなく、ちゃんと秩序のある調の範疇で音楽を描いている。この曲は通しで演奏されるけれども内部的には曖昧な三楽章形式で、それぞれのパートは全然違う雰囲気だ。最初のパートの入りはまさに重く悲痛なもの。コペイのVcは軽やかに滑って行くが旋律も内声部も重苦しい。特に内声部の悲嘆にくれたような重奏が強く迫る。
中間部はいわば緩徐楽章に相当し、オケは静かに見守る感じ。そのためかコペイの独奏部がハイライトされる。明転する部分も間欠的に少しだけ現れるが、オケのパート、例えばCl、Obが長めのソロをとって、そのしじまを縫ってコペイが擦過音を駆使してどろっとした重苦しい雰囲気を転調を繰り返しながら綴っていく。
最終パートは継ぎ目なく徐々に訪れ、最初のパートの主題の再現から始まる。冒頭の主題を更に重くした展開部がずっと続く部分は息が詰まるくらいの閉塞感がある。ティンパニの静かで不気味な連打に乗せ、コペイが暗く悲しい別の主題を語り始める。哀歌といった風情。
森の静けさ
最初のソロモンの重苦しさを緩和してくれる、ある意味弛緩した選曲だと思う。この曲の名前はKLIDで通っているが、これはチェコ語だそうだ。とても緩徐で美しく、歪感のない純和声が過半を占め、ちょっとした移調と少しの非和声がアクセントなる佳曲といえる。コペイのVcのなんと美しく理性的なことか。
ドヴォコン
この曲は余りに有名で、今更何かを書こうとは思わないので、以下、この演奏の印象を書き綴る。1楽章の長い動機と序奏は普通と言えば普通だが統制のとれたコンパクトで誇張のない入りだ。民族色の強い勇壮で土の匂いのする大らかな主題をHrが刻んだ後、小さめなトゥッティが訪れ、そして、すっとコペイが入ってくる。堂々としたというより、寧ろナチュラルに語り掛けるように素の自分はこうだ、と言わんばかりのコンパクトかつハイスピードな歩の進め方。カラビツもその辺は理解してか軽量フェザータッチのサポートを心掛けているようだ。
緩徐楽章に入ってもコペイは特段に強い主張をするわけではなく、自然な地声で歌うようなモデレートなヴィブラートを使って、おそらくはドヴォルザークが描きたかったボヘミアの大地の情景描写を淡々とこなしていく。中間部はオケの情感極まる主旋律の啜り泣きが秀逸で、しかしコペイはそれに完全に与することなく冷静に内声部を織りなしていく。そしてこの楽章のコーダはコペイ、オケの融和が実に美しい。
最終楽章は再び勇猛なボヘミアン気風に戻り、ここでコペイは今まで見せなかったエモーショナルで強くてソリッドな音を発し、硬派な感情を漲らせて来る。そして中間あたりの緩徐部での情感の籠められた美しい主旋律の送弓と操弦がとても印象的。何ともいえない大らかで、そしてピュアで純朴な音色が静かな感動を呼び覚まさせてくれる。コーダ直前における鳥の囀り(さえずり)のようなVcのカデンツァには溜息が出る。この人のVcはまさに変幻自在というべきなんだろう。カラビツとはこういった展開で行こうと打ち合わせていたに違いないが、それにしても息がぴたりと合った理想的で稀有なこのコンチェルトの演奏設計には膝を打つのだ。
録音評
Audite AU97734、通常CD。録音は2016年8月29日-9月1日、ベニューはベルリン、Großen Sendesaal des rbbとある。録音フォーマットは96kHz、24bitのL-PCM。オーダイトは伝統的に無理をしない整った音調を旨とするレーベルだったが、久し振りに聴いたこの盤はかなり澄明でレンジ感のある優秀録音だ。品質は完全デジタルだが音の作りとしてはちょっとアナログ調に振った作りで、ちょうど20世紀末期のタンノイ、それもスーパーレッド・モニターを彷彿とさせる、梨地仕上げ、もしくはシルキーな肌触りとなっていて、昔のオーディオファンなら耳に懐かしい聴感かも知れない。これは、ドイツの楽団のサウンドをまるでチェコフィルのように聴かせるような演出なのかもしれない、というのは穿った見方だろうか。
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