Tchaikovsky: Ballet Suites@Mari & Momo Kodama |
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Tchaikovsky: Ballet Suites (Transcribed for Piano Duo)
Sleeping Beauty, Suite, Op.66a
Suite for Piano Duo transcribed by Sergei Rachmaninov
The Nutcracker Suite, Op.71a
Suite for Piano Duo transcribed by Anton Arensky
Swan Lake, Op.20 Suite
Suite for Piano Duo transcribed by Eduard Leontyevich Langer
Swan Lake, Op.20 Suite
Suite for Piano Duo transcribed by Claude Debussy
Mari Kodama (Pf) & Momo Kodama (Pf)
チャイコフスキー・ファンタジー
(1)ラフマニノフ編曲による連弾版
「眠りの森の美女」組曲 Op.66
序奏、リラの精/アダージョ、パ・ダクシオン/長靴をはいた猫/パノラマ/ワルツ
(2)アレンスキー編曲による連弾版
バレエ音楽「くるみ割り人形」 Op.71より
小序曲/行進曲/金平糖の踊り/アラビアの踊り/中国の踊り/トレパーク/
葦笛の踊り/花のワルツ/パ・ド・ドゥ(グラン・アダージョ)
(3)ランゲル編曲による連弾版
「白鳥の湖」Op.20
情景/四羽の白鳥の踊り/パ・ド・ドゥ(グラン・アダージョ)
(4)ドビュッシー編曲による連弾版
「白鳥の湖」Op.20
ロシアの踊り/スペインの踊り/ナポリの踊り
児玉麻里、児玉桃(ピアノ・デュオ)
Biography of Mari & Momo Kodama
児玉麻里、桃は実の姉妹にして、それぞれが欧米で活躍する世界的なソロ・ピアニストだ。因みにお姉さんの麻里さんの旦那さんはこれまた世界的な指揮者であるケント・ナガノ氏。一方、桃さんとは5年ほど前、ひょんなことからfacebook friendとなっている。
BIO of Mari Kodama
Mari Kodama was born in Osaka and raised in Germany and Paris. At the Conservatoire National in Paris, she studied piano with Germaine Mounier and chamber music with Genevieve Joy-Dutilleux. She has also worked with Tatiana Nikolaeva and Alfred Brendel.
Mari made her New York recital debut at Carnegie’s Weill Recital Hall in 1995. Her U.S. festival appearances include Mostly Mozart, Bard Music Festival, the Hollywood Bowl, California’s Midsummer Mozart Festival, Ravinia, and Aspen. In Europe she has appeared at festivals in Lockenhaus, Lyon, Montpelier, Salzburg, Aix-en-Provence, Aldeburgh, Verbier, La Roque D’Antheron and évian.
Mari Kodama has presented exceptionally well-received complete Beethoven sonata cycles in Los Angeles, Tokyo and Nagoya, and has appeared in recital in New York, Paris, in Spain, Germany, and much of the U.S. In February 2008 she performed a special program in Vienna celebrating the 10th anniversary of the Schoenberg Center.
BIO of Mari Kodama
Born in Osaka, Momo Kodama spent her early years in Europe; educated at a German school, she attended the Conservatoire National Supérieur de Musique de Paris before studying with great masters such as Murray Perahia, Andras Schiff, Vera Gornostaeva and Tatiana Nikolaïeva. In 1991, she became the youngest winner of the Concours International ARD in Munich.
In 2011, Momo performed ‘Momo Kodama Piano Fantasie’ in Toyko and Kyoto, Japan, for which she was awarded the Saji Keizo Prize by the Suntory Foundation.
A keen chamber musician, she regularly collaborates with violinists Christian Tetzlaff, Renaud Capuçon, Augustin Dumay; cellists Gauthier Capuçon, Steven Isserlis, Alban Gerhardt and Christian-Pierre La Marca; her sister, pianist Mari Kodama; the clarinettist Jörg Widmann and his sister, Carolin Widmann, with whom she will perform Messiaen’s Quatuor pour la fin du Temps at the Konzerthaus in Berlin in February 2016.
児玉麻里の演奏はもうずいぶん前になるがペンタトーンからのベートーヴェン・チクルスの中の一枚を聴いている。彼女は質実剛健で誇張のない素晴らしいピアニズムの持ち主で、日本人ピアニストではあるけれどもカルチャーとしては欧米の香りのする人だ。一方、児玉桃に関してはECMレーベルから何枚もアルバムが出ているが残念ながら聴いたことはない。そして今回、お姉さんが所属するペンタトーンに招聘される格好で初の連弾集と相成ったということだろう。実ステージは知らないが、録音としては二人が共演するのがこれが初めてとのことで、彼女らにとってはモニュメント的なアルバムといえようか。
眠りの森の美女 ラフマニノフ編
ピアノ2台向けの連弾譜でここまで表現できるのかという幅の広さだ。この連弾ピアノ譜が優秀なのはわかるが、これはひとえに演奏者が素晴らしいと言わざるを得ない。実は、ここにあるチャイのバレエ曲で普通はオケがやる曲をピアノ連弾で聴くのは初めてで、こんな表現が可能なのか? と思わざるを得ない出来栄え。オケの場合、当たり前だが色んなパートを鳴らす関係で多種のサウンドが縦横無尽に散乱し、これらをマイクロスコピックな領域まで完全に同期させるのは無理で、このアインザッツのずれがある意味落ち着かない。しかし、よく出来たピアノ独奏あるいは4手連弾となると時間軸の揺らぎやアインザッツのずれによるノイズや歪感はほぼ皆無で純粋な旋律と和声とがダイレクトにこちらに迫ってくる。この演奏がまさにそうで、ほぼほぼ完璧な純音が聴いて取れる。編曲だが、ラフマニノフらしい作りになっていて、原曲のスケール感をそのままの縮尺で出そうという趣向ではなく、特徴的なメロディーライン、インティメートな内声部の輪郭を抽出して象るような手法と考えられ、つまりはオケ相当のダイナミックレンジを狙ったものではない。他の演奏との比較をしたわけではないので優劣云々を言うのは烏滸がましいが、二人の連弾はとてもハイスピードで巧く、そして抑揚が豊か。
くるみ割り人形 アレンスキー編
刮目すべきはこのアレンスキー編のナットクラッカーだ。前の眠れる森の美女も、後に入る白鳥の湖もそうだが、オケ用のスコアを独奏あるいは連弾ピアノ向けに編曲すれば原理的には必ずデシメーション(間引き)が発生するため、音数自体もダイナミックレンジも縮減されるのが普通。ところが、このアレンスキーの編曲は呪術的なところがあってオケ版と同等、ひょっとするとそれを凌駕する絢爛性・レンジの広さを引き出すことに成功している。もちろんその辺のアレンスキー編の秘密をこの二人が知ったうえで解釈・演奏しているから余計に音数が多く、オケ版に勝るとも劣らない演奏になったのであろう。白眉は葦笛の踊りから花のワルツ、まぁ、どうすればこんなにも優雅で華やか、そして心が浮き立つような、混然一体となった素晴らしい弾き方ができるのであろうか。ただただ脱帽。
白鳥の湖 ランゲル編&ドビュッシー編
前半にランゲル編の3曲抜粋、後半にドビュッシー編の3曲抜粋が並ぶ。まずはランゲル編から情景。ダイナミックレンジが比較的広く、デシメーションの弊害が目立たないような工夫がされているけれども、そこはやはりスケールダウンと平坦化は免れない。しかし、二人の演奏はその辺を補って余りあるものがあり、とても厚みがあってかつ熱情的、切々としたロマンチシズムから発露される激しい抑揚を用いて弾き切っている。ドビュッシーの3曲はいずれも「踊り」で、これらは一聴してランゲルの編曲ポリシーと異なる。とにかく薫りが強くて独特の色彩感があるのは原曲がチャイコフスキーであろうともドビュッシーのカラーは出てきてしまうものだと妙に納得。この3曲はどれもが出来が良い。ロシアの踊りの翳りの強い離散的な導入部から中間部、そしてラストの疾駆感の強いコサック風味の複雑な拍取りがリズミックで良い。スペインの踊りは白眉。明るく色彩感に満ちた風光明媚な彼の地の風景が目に浮かびそうな佳曲。二人の演奏はぴったりシンクロしていて音数ももの凄く多く聴こえる。コーダ部の高速トレモロ、3連符の連続が圧巻。そしてこれまた独特の拍取りで彼の地の風景が目に浮かぶナポリの踊りも素晴らしい。中間部から二人のアクロバティックな技巧が炸裂して目くるめく音世界が現出する。とにかく音粒がきらきらと散乱し高速で飛び去って行く。
これは芸術性に秀でた大変素晴らしいアルバムといえる。三大バレエ曲のハイライトをハイセンスかつ知的なピアノ連弾で嗜むのは良い趣味だと思う。
録音評
PentaTone Classics PTC5186579、SACDハイブリッド。録音は2016年4月/MCOスタジオ5、ヒルフェルムス(オランダ)。この盤はSACDレイヤーで聴くべきだ。CDレイヤーのスタインウェイは少々痩せてピーキーかつ神経質に響く。SACDレイヤーのスタインウェイの音はごく自然で、音場のスプレッドや奥行き展開、音像定位も良好だ。そして収録自体のクォリティは非常に高く、アンビエントノイズやフィンガーノイズといった上部雑音がほとんど聴こえないくらいだ。2人の紡ぎだす胸がすくような変幻自在のピアノサウンドは一聴の価値あり。
参考:ペンタトーンが制作したプロモーション用メーキング画像がYouTubeに出ていた。二人のトーク内容はライナーノーツの冒頭と全く同じ。(リンク切れするまで掲載)
うまく再生できない場合は直接URLを参照:
https://www.youtube.com/watch?v=bPZ7z_nb580
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ご無沙汰しております。買われたのですね? 緻密に計算されているけれども情感が籠った演奏で、連弾ってこんなに表現幅が広いのか? と再認識させられました。
実は、もう一枚、別の観点から素晴らしい出来栄えの連弾集があって、近日中にアップ予定です。