田渕俊夫展@富山県水墨美術館 |
田渕俊夫は日本画の大家である。芸大を出た直後の若年期より欧州やアフリカ、アジア各国への逗留/制作旅行を通じて培われた現代的な構図と、息を呑むような陰影描写は素晴らしい。若い頃は草木や花と言った植物、植物をあしらった風景画が得意であったが、年齢とともに素材が多様化して行っており、いまなお多くの優秀作品を生み出し続けている。
田渕の画風は若年期から一貫した日本画の写生技法である。淡い線と点と色で描くという要素技術は日本画の基本に従ってはいるが、岩絵具が発する清冽な寒色系の色彩感、超微細な多数の点と直線とで大胆に構成された面、光の明滅と明暗といった特徴は日本画の範疇を大きく超越した魅力を放っている。
水墨美術館では氏の作品を年代順に展示しており、その変遷を観ることが出来る。草木や花などの植物の描写は、古くは等伯、その後の淋派のそれに通じる鄙びたものがある。しかし、色彩と構図においては明らかに現代に生きる人の眼を通じたものであって、無駄のない精密な構築美、そして連綿と続く生命の躍動感に満ち溢れたダイナミックレンジの広い絵となっている。
壮年から現在に至る画風は更に多様性を増して来ており、今回の展覧会のテーマである「いのちの煌めき あくなき日本画への挑戦」に関しては、昨年の大震災、大水害を間近に見た氏が犠牲者への鎮魂および被災地の再生への祈りを込め、生命の煌めきに焦点を合わせて描いた二つの作品(煌I、煌II、いずれも横10メートルを超える大作)を中核に据えている。
煌Iは、俵屋宗達や酒井抱一、鈴木其一らが競って描いた風神雷神の図を現代風かつ抽象的に表現したらしい壮大な作品で、向かって右側が竜巻の漏斗を模した風を意味する絵、左側が暗雲から稲妻が飛ぶ様子を模した雷を意味する絵と思われる。煌IIは、雄々しい山林に激しい風雨が叩き付け、これが激流となって迸り山の稜線を駆け下りる様子を象徴的に描いた作品で、集中豪雨あるいは津波の猛威を意味するものと思われた。
その他、秀逸なモノクロームの水墨画が印象的であった。例えば長谷川等伯の松林図にインスパイアされたと思われる山林を描写した作品、黒四ダムの観光放水をダイナミックに切り取った作品、濃尾平野のビニールハウスを幻想的に描いた作品、セントレア空港の空撮夜景を模した作品などがそれである。
※Webには煌Iはあったが、煌IIは残念ながら見当たらなかった
※幾つか拾ってきたものを解像度を下げて参考までに転載
富山県水墨美術館
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コメントありがとうございます。富山出身で横浜在住です。たまたま帰省した際の日記でございました。はい! セレネ美術館には平山郁夫が描いた黒部の絵があったりして圧巻ですね。また行きたくなりました・・。
primex64 拝
> 因みに私も富山県出身で、8月25日には北陸にいました。
あら! 同郷ですね。私は8/24に羽田に戻りました。今年は全国的に暑い夏ですが、北陸は特に暑いですね。
富山では、暖冬が続いて除雪費予算が浮いた年には美術館の収蔵品を買い足したり音楽ホールを拡充したりと、立ち遅れている文化的なところにお金を使うようです。