立山逍遥 #3 |
ランチをゆったりとった後、室堂ターミナルから各駅停車の高原バスに乗り込んで弥陀ヶ原を目指す。
立山駅・室堂ターミナル間の往復チケットを買うと、天狗平または弥陀ヶ原で一度だけ無料で途中下車が可能となっている。そのかわり、再度バスに搭乗するには降り立った時点で乗り込む便の予約が必要となる。
13:00過ぎに室堂ターミナルを出発した高原バスが弥陀ヶ原バス停に到着したのが13:20過ぎ。再搭乗は15:15発の便に予約して弥陀ヶ原高原を散策することにした。
因みに弥陀ヶ原および称名廊下で隔てられた大日平は今年の7月、ラムサール条約に定める条約湿地として登録された。
ラムサール条約の正式名称は「特に水鳥の生息地として国際的に重要な湿地・干潟・湖などの湿地及びそこに生息・生育する動植物の保全を目的とした国際条約」という長ったらしい名前で、要するに世界的に貴重とされる湿地を保全する目的で運営されている国際条約である。
弥陀ヶ原と大日平は雪田(せつでん)草原と呼ばれ、1年のうち約半年間が5メートル前後の豪雪で覆われる日本最標高(1040~2120メートル)の湿地である。弥陀ヶ原には「餓鬼の田」と呼ばれる池塘が点在し、その周辺にはミヤマホタルイ、ミズゴケ、モウセンゴケなど湿地特有の植物が生息する。
一帯には(といってもごく一部だが)木道が整備されていて割りと楽に散策ができる。弥陀ヶ原ホテルの脇から木道に入った。途中の休憩広場などの整備工事をしていたり痛んだ木道を交換したりと短い夏に結構忙しいスケジュールが詰め込まれているようだ。
ツアー観光客が地元ガイドに引率されて高山植物、湿地植物の解説を受けながら木道をゆっくりと歩いているが、ものすごく混んでいるという状況ではない。木道の脇には大小の池塘があって日の光を浴びてきらきらと輝いている。その水面近くを黒い小型のトンボが飛び回ったり、黄色い蝶がひらひらと飛来したり、また水量が多い池塘にはアメンボがいて足を浮かせて水面を滑走している。
ここには小さいけれど確実な生命が息づいている。
多くの観光客は木道を途中まで進むが1キロにも満たない途中の分岐点で引き返して行くようで、分岐より先へ進む人たちは殆どいない。我々は北へと伸びる木道を進んだ。木材はかなり痛み、ところどころ崩壊していて、ここを踏み抜かないよう注意しながら慎重に進む。
木道は称名の源流方面へと進んでいることになる。途中で小さな沢をいくつか越え、アップダウンを繰り返しつつ東へ折れながら沢を降りる格好へと道が伸びている。眼前に大日連山が近付いて来る。
遠くから沢の底を流れるサワサワという水の音が聞こえてくるし、歩を進めるごとにそのせせらぎの音は徐々に大きくなってくる。
この辺りまで来ると人の気配はまったくせず、また、高原バスやホテル周辺のノイズもまったく聞こえない。背後を振り返ると弥陀ヶ原ホテルが点のように小さくなっている。随分と来たものだ。街からほんの少し交通機関を乗り継いでここまで人気(ひとけ)がないところまで来れるとは実に稀少な環境だと思う。残された時間を鑑み、今まで来た道を引き返すこととした。
再び人の気配がする場所へと戻り、帰りのバスまでの僅かの時間、少し疲れた足腰を弥陀ヶ原ホテルのカフェで癒した。
美女平からケーブルカーに乗り込んで下界へと下る。終点に到着し扉が開くと盛夏の熱気に再び包まれる。私たちの束の間の高原避暑は終わった。
(了)
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わざわざコメントを頂戴し恐縮です。
>低山に比べて景色が全然違います。
はい。あの深い緑と白い雪渓、切り立った峰々は日本じゃないみたく、北アルプスと命名した人の心がよくりかいできますね。また山歩きをされた折には日記アップしてくださいね。
因みにこのBlogでは横浜の風景を時々アップしていこうと考えておりますので、たまに覗きにおいでくださいませ。