Duruflé: Requiem Op.9@Bill Ives/Choir of Magdalen College |
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デュリュフレ:
・レクイエム Op.9(合唱、小管弦楽とオルガン版)
・顕現節の入祭唱への前奏曲 Op.13
・アンリ・ラボーの主題によるフーガ
・グレゴリオ聖歌による4つのモテット Op.10
・ジャン・ギャロンを讃えて
・瞑想曲
・ミサ曲『クム・ユビロ』Op.11
イングリッシュ・シンフォニア
オックスフォード・マグダレン・カレッジ合唱団
ビル・アイヴス(指揮)
デュリュフレは近現代に生きたフランスのオルガン奏者/作曲家。このレクイエムはフランス印象楽派の和声に満ちあふれる佳作だが旋律の多くをグレゴリア聖歌から引用しているためか、どことなく中世の教会音楽のような雰囲気がある。全体的には静謐で純粋な和音が支配するが、途中の一部の和声では解釈が難解な不協和音も含まれており、ヴェルディやフォーレのようなダイレクトで訴求力のある響きとは言い切れず、よって世の中的には人気は今一つなのかも知れない。尚、このレクイエムの典礼文はフォーレのそれと全く同じと言うことである(ライナーは未確認)。
オックスフォード・マグダレン・カレッジ合唱団は少年合唱とバリトン隊がミックスされた合唱団で、歌唱自体の出来映えとしてはちょっと稚拙感がある。それがある種の演出となって純粋さを強調するという企画なのかも知れないが、ヒリヤー/エストニア、ミュンフン/聖チチェーリアなどのエネルギッシュで精緻・厳格な歌唱やエキルベイ/アクセンタスの独特の幻想感を伴った大人の歌唱を聴いてしまうとちょっと違和感がある。有名なサンクトゥスはこの特徴がそのまま前面に出た弱く細い線の少年合唱で始まり、バリトンが厚みを徐々に加えてクライマックスを迎えるという作りになっており、アディエマス (ADIEMUS) の様な独特の浮遊感がある。ここは賛否は分かれると思う。
しかし、全編を通してMagid El-Bushraという人のカウンター・テナーは抜群であり(通常版ではコントラルトかメゾで歌われるのだが)、ピエ・イエスが超の上に超が付く白眉だ。合唱の幼ない和声とは対照的な巧い独唱者の配置はこれまたこの盤のユニークな演出の一環なのかも知れない。
その他、多くはないデュリュフレのオルガン作品(オルガン奏者としてはあの高名なヴィエルヌの弟子だった)、その他の宗教音楽作品がバンドルされている。企画(というか解釈)には賛否別れるが面白い盤だと思う。
(録音評)
Harmonia Mundi USA、HMU807480 、SACDハイブリッド。録音は2007年オックスフォードのマグダレン・カレッジ礼拝堂(=写真)。
このレーベルはDSD録音によるSACDハイブリッド盤制作にかけては業界で一二を争う優秀録音ファームであり、この盤もまたその能力を遺憾なく発揮している。このレーベルの特徴である、奥に引っ込み過ぎず、前にも出過ぎずと言った中庸な音場展開をベースとして息を飲むリアルな音像定位とゾクっとする様な臨場感と実在感が漂うという出来映えだ。
ここはこういった合唱ものを録らせると抜群であり、naiveのアクセンタスのシリーズと双璧を成すと言えようか。音楽的には野心的な試みであり、オーディオ的には抜群の音質。音を聴いてワクワクしたのは久し振り。
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