R.Strauss: Eine Alpensymphonie Op.64 Etc.@Jansons/RCO |
R.シュトラウス:
・交響詩「ドン・ファン」 Op.20
・アルプス交響曲 Op.64
マリス・ヤンソンス(指揮)
ロイヤル・コンセルトへボウ管弦楽団
http://www.hmv.co.jp/product/detail/2770693
この著名な曲目は、ヤンソンスRCOでは初録音ということらしいが、ちょっと意外だ。もうとっくにリリースされていたものと思ったが。そう言えば自分もアルプス交響曲の新しいCD録音は実は持っていないのに気が付いた。随分と古いがずっとオーマンディ/フィラデルフィアを聴いて来ている。
ドン・ファンはヤンソンスらしい揺れの激しい劇的で派手な解釈・演奏で期待は裏切らない。これじゃないと! という乗りの良さと疾駆感は健在だ。ちょっと前に密度感、色彩感ともに高くて理知的なド・ビリー/RSOウィーンの演奏を聴いたが、ヤンソンスRCOのはこれほど緻密で美しいとは言えないものの輝きと色彩感では圧勝。Rシュトラウスはヤンソンスのリードには向いていると思う。
アルプス交響曲だが、眼下に広がる雄大で明媚な山岳地帯の情景が手に取るように豪快に描かれた良い演奏だ。ちょっと荒れた部分や金管隊がよろめく箇所もいくつかあるけれども元気溌剌で目一杯エネルギーを放散して演じ切った力作と言える。この作品は中盤から明暗が交錯し、短調長調、強奏弱奏の出し入れが頻繁、激しい曲想なのだが、ヤンソンスはその対比をくっきりとメリハリを付けて細かく、そして速めにリードしていて、普段はメロウなレスポンスを示すRCOもそれに呼応し、そして全てのパートがそれに対し殆ど遅れない機敏な瞬発力を発揮しているのは珍しい。というと失礼か・・。いずれにせよ多少暴れ気味ながら色彩感も疾駆感も満点のダイナミックな演奏だ。
(録音評)
RCO Live、RCO08006、SACDハイブリッド。録音はドン・ファンが2007年10月18,21日, 2008年1月16,17日、アルプス交響曲の方が2007年9月19-21,23日とある通り、珍しくテイクを細かく録り集めた収録だ。
録音担当はいつものPolyhymnia Internationalで、88.2kHzサンプリング・ハイビットPCM録音。DSD録音とは明らかに異なる密度感の高いソリッドで乾いた超高音質録音だが、少々鳴らし辛いディスクかも知れない。
ドン・ファンはSACD/CDレイヤー共に非常に優秀。対するアルプス交響曲のCDレイヤーは重層的なブラス/低音楽器群/パーカッションが印象的で抜群の出来映えなのだが、SACDレイヤーは最初うまく鳴らなかった。ppでの解像度が低く、ffでは定位と分離が瞬時に悪化して団子状になるという破綻現象が見られた。何度か鳴らして慣らすと次第に分離が良くなり細部の見通しが改善してくることから分かる通り、我が家の再生系がこのソースの分解能に追随出来ていなかったものと思われる。今後更に良くなりそうだ。
(後日談)
アルプス交響曲のSACDレイヤーは本物の超高音質であった。音質傾向としてはCDレイヤーと同じく重層感と稠密なテクスチャが特徴なのだが一つ一つの音の立ち上がり、立ち下がりが恐ろしいほどにハイスピードだったのだ。以前に取り上げたハイビットPCMの超高音質盤と同等もしくはこれを上回るクォリティだ。
特筆すべきはチューバやコンバスが出す低域で、これらの音は同心円状の球面波であることが良く分かる克明さだ。またサウンドステージの広さは格別、ホールの残響が豊かに含まれており、遠くステージ裏から鳴り響くバンダホルンが山の向こうから聞こえているような幽玄さを演出している。
レコーディングはDSDではなくPCMであるが、ここまでハイスピード・高解像度であれば方式論を云々することは意味のないことだ。現代においては申し分のない出来映えの演奏&録音。
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